香港では今年、1年延期になっていた立法会選挙が行われる。昨年はCOVID-19の感染拡大(と言っても、日本ほどのことではなかった)を受けて、人が集まるのを避けるということで、1年延期となった。どこかの市の廃止の是非を問う住民投票とは正反対である(笑)。
で、大きく変わることが予想される香港の選挙制度のもとで、年内のどこかの時点で行われる立法会選挙に向け、ちょいちょい動きを追ってみようかなと、思い立つ。【1】としたからには、少なくとも【2】まではやらないとあきまへんわな。ま、気の向いたときに、ってところで(笑)。
全人代での審議内容が明らかに
さてその立法会選挙にあたって、3月5日に開幕した中国の全国人民代表大会(全人代)で、選挙制度の見直案が承認された。開幕前夜の4日に開かれた記者会見で、今会議の10項目の議程が発表され、その中には全人代常務委員会が提出した「全國人民代表大會關於完善香港特別行政區選舉制度的決定(草案)=全人代の香港特区選挙制度改善に関する決定(草案)」の議案審議も含まれていることが分かった。
全国政協の張慶黎副主席と夏宝竜副主席(国务院港澳事务办公室/國務院港澳事務辦公室=国務院香港マカオ弁公室)は同日夜、香港の政協委員と接見した際に、以下のような選挙制度の改革案の大まかなところを説明しており、香港の各メディアもそれぞれの立ち位置から報じている。
1)行政長官選挙委員会に第5分野を新設。議席数は1200から1500に拡大。但し、区議会議員の117議席は撤廃。行政長官候補の指名ハードルは150人から188人に引き上げ、各分野から少なくとも15票を得なければならない。
2)立法会は70議席から90議席に拡大。新増議席数の内の約20議席を選挙委員会から選出。区議会第2枠(通称、超級區議会=区議会との兼務)の5議席を撤廃。
まあ随分と思い切ったもんだ。この時点でこうして説明があったってことは、決定事項とみなしていいだろう。この時点では、直接選挙枠がいかほどかはまだ明らかにされてはいなかったものの、間違いなく減るんじゃないかという予感…。
改革案に対し、我らが林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は3月8日、「現行の選挙制度には抜け道があり、国家の安全、主権、発展の利益、さらには香港の長期的安定に危害を与える。しかしながら、香港自身には処理能力がないため、中央の権力行使によって香港の困難を解決することに感謝する」と述べた。すごい言い分だな…。さらに特区政府は3方面から中央の作業に協力すると表明。すなわち、「公衆への説明」、「現地選挙法例の改正」、「今後12か月に多くの選挙を手配する」の3点。その筋の情報では、政府は初歩的に9月にまず選挙委員会選挙を行い、12月には延期となっていた立法会議員選挙を行う計画とのこと。国安法のこともあるんで、それまでにどれだけの民主派政治組織や民主派の皮をかぶった反乱分子が残っているか見ものではある。林鄭長官は「民主派から参政の空間を搾取するための制度改革ではない」とも会見で言ってたけど、そこはもうねぇ…(笑)。
全人代が香港の選挙制度改善を可決!
喜ばしいかと聞かれれば、「う~ん」だし、かと言って嘆き悲しむような話でもないわけで…。まあ、2019年のあの「反中乱港」の大騒動を思えば、遅かれ早かれこうなるのは目に見えていたわけで、その点では打ち壊し、火付け、暴力、殺人でやりたい放題やっていた「香港の独立」だの「革命」だのと、空想の世界に生きていた連中の罪はあまりにも大きいわな。
ってわけで、全人代で3月11日、「全國人民代表大會關於完善香港特別行政區選舉制度的決定(草案)=全人代の香港特区選挙制度改善に関する決定(草案)」の議案が可決と相成った。「完善香港」とはまた、言うねぇ~、全人代も。
議案は賛成2895票、反対0票、棄権1票で可決。会議では「行政長官と立法会の選出方法を含む選挙制度は香港特区政治体制の重要な構成部分であり、一国両制度の方針と香港特区の実際の状況に適合し、愛国愛港者による香港統治を確保し、国家の主権、安全、発展の利益を守ることに有利で、香港の長期的な繁栄と安定を維持しなければならない」「香港特区選挙制度を改善し、香港の実際の状況に合った民主制度を発展させるため、中華人民共和国憲法、香港基本法、香港国家安全法=国安法の関連規定に基づき全人代が決定を下した」との説明があった。一番目に付くのはやっぱり「愛国愛港者による香港統治」だわな。そりゃもう当たり前のことだと思うんだが、西側諸国は気に入らないらしく、この「愛国」に噛みつくこと甚だしい限り。中国人が祖国を愛しちゃいかんのかえ?
この可決によって香港基本法附件一及び附件二の改正権限が付与されたことで、選挙制度変更に向けた手続きがとられた。
愛国愛港、港人治港
で、可決の内容は9条にわたる。詳細はこれから詰めていくことになるが、公布とともに施行されることになる。
では、その9項目はどんな感じかと言うと…。
① 行政長官の選出などを行う選挙委員会は「工商・金融界」「専門業界」「低所得層、労働、宗教など」「立法会議員、地区組織代表」「全人代香港代表、全国政協香港委員、全国的団体の香港メンバー」の5分野1,500人で構成する。(現在は1,200人)
② 行政長官候補は選挙委員会の委員188人の指名を必要とし、5分野それぞれの委員が少なくとも15人必要。
③ 行政長官は選挙委員全体の過半数の支持を得なければならない。
④ 立法会は現在の70議席から90議席に拡大し、選挙委員会選挙、職能別選挙、直接選挙の3つの方式から選出される。
⑤ 新たに香港特区候補資格審査委員会を設置し、選挙委員会の委員候補、行政長官候補、立法会議員候補の資格を審査・確認のシステムを構築する。
⑥ 香港基本法附件一『香港特別行政区行政長官の選出方法』及び附件二『香港特別行政区立法会の選出方法および表決手続』の改正の権限を全人代常務委員会に付与する。
⑦ 香港特別行政区は本決定と、全人代常務委員会によって改正された香港基本法附件一及び附件二に従い、香港特別行政区における関連の法律を改正するものとする。
⑧ 行政長官は、選挙制度の策定状況や選挙組織などの重要事項の報告書を中央人民政府に提出するものとする。
そして、⑨香港の選挙制度を改革し、『「愛国者」を主体とする「香港人による香港統治(港人治港)」』を確実にする。←実はこれがトップ事項(笑)。
今日のところは、あくまで骨子が明らかになったわけで、詳細は近々わかる。多分、もう出来上がってると思うよ(笑)。ま、どんなことになるか、楽しみにしておこう…。
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。