<アイキャッチ画像:「清き一票」を投じる、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官。この度の結果には「深く反省」と言うが…(RTHK香港電台)>
久々に香港ネタ。
色んな事が起きすぎて、記事を漁ったり画像を拾ったりしていたら、気が重くなってしまい、デモネタは遠ざけてしまうようになってしまった。ま、仕方ない。「黒衛兵」どもに香港が壊されていく日々が続き、一方で警察は容赦なく催涙弾をぶっ放す。これ、どっちの影響もこれからの香港を悩ませることになるのは明らかで、そういうあれやこれやを思うと、うんざり…。
あ、「黒衛兵」ね(笑)。元々は「居残りデモ隊」って呼んでいて、次に「勇武派」、そして「暴力示威者」。今や、その行動パターンがあまりにも「紅衛兵」に似ているから「黒衛兵」。ちょいちょい西側メディアの嘆きをTwitterで見かけるけど、「彼らはもとより、デモに参加している一般市民も、聞く耳を持たない」「すべてを一色に染めようとしている」「100%が同じ主義主張を持たないと許せない風潮」などなど、あの人たちもうんざりしてるんだなぁ、ってのがうかがい知れる。そんな嘆きからも、破壊行為を繰り広げる連中が、「黒衛兵」と呼ばれるにふさわしいでしょ(笑)。
さて、そんな中で區議會選舉が予定通り実施された。理工大学での「立て籠り」(周庭ちゃんは悪意たっぷりに「閉じ込め」と言う。彼女も随分と邪悪な女になったもんだw)が過激を極めたことから実施が危ぶまれたが、なんとかこの日を無事に乗り切ることができた。
香港で唯一の「全面普通選挙」である2019年區議會選舉は11月24日、投票が行われた。投票率は、なななんと!過去最高の70%超。びっくらこいた。
どう見ても親中派を中心とした建制派に勝ち目のない今回の區議會選舉。予想通り、汎民主派を中心とした反対派が大勝したが、小生、建制派は多分一桁しか獲れないだろうと思っていただけに、大敗ながらも59議席を獲得し、得票率も40%を超えたのはなんとも意外だった。
獲得議席数だけで見れば、反対派の圧勝もいいところだが、「総得票数」は反対派が167万票だったのに対し、建制派は123万票で、およそ6:4。さほど「圧勝」というべきものでもないのだが、そこが「小選挙区制」のマジックというところか。この123万票は反対派が決して無視できない数だと思うが、無視、排除に徹するのかな…。ますます社会の分断が鮮明になってゆくんだろうな…。
「建制派」は、民建聯、工聯會といった筋金入りの親中派政党から、元・親英国派、財界寄り政党による「特区政府」支持派。一方の「反対派」は民主党、民協、街工などの「汎民主派、伝統的民主派」のほか、独立を訴える「港獨派」、香港第一主義の「本土派」のほか「本土自決派」など幅広く、それぞれに意見の対立もある。
香港の區議會選舉は、全港を18区に割った「全港十八區」の議会の選挙で、区内を小選挙区に割ってそれぞれから議員を選出する。小生が住んでいた「港島南區(香港島南部)」では17の小選挙区に割られる。要するに、南區區議會は17の町会から選出された議員が、各地区の問題や課題を持ち寄って討議する場、ということだ。
今回の選挙は、日本の報道などを見ていると「天下分け目の大決戦」としているものが多いが、実際には「町会の代表」を選出する選挙でもあり、政治への即効性はない。だが、いずれ立法会選挙や、行政長官選出の「選挙委員会」へ影響を及ぼす。その仕組みは、またその時にでも(笑)。
ここ半年の香港情勢から見て、この選挙が「政治化」し、「住民投票」的なものになってしまったのは仕方ないことだが、だからと言って、当選した反対派議員が区議会で、デモ同様に「五大要求」を唱えるのは、まったくの場違いで、あくまで「町内のお悩み解決」が、区議会議員に託された唯一の仕事である。その辺を、当選した多くの「政治素人」がわきまえているかどうか、今後の仕事ぶりに注目というところだ。
ちなみに、小生が住んでいた南區田灣(Tin Wan)選區で見てみると。
選挙権を有する年齢にある人口(7年以上香港に住む18歳以上)は、南區田灣選區ではおよそ18,000人とされ、そのうち9,787人が「選民登記」を行った有権者。「選民登記」をしないと投票はできない。この9,787人のうち10.1%が新たに登記した人。今回の選挙、全港で「選民登記」する人が急増。これを見ても、この區議會選舉が特区政府に対する意見表明の場になるのは明らかだった。で、田灣選區の選民登記者のうち、30歳以下が16%、61歳以上が35.9%。
選挙戦は、現職で港島南區の建制派の大物、陳富明(チャン・フーミン=建制派無所属)と新人の袁嘉蔚(ティファニー・ユエン=本土自決派・香港眾志前副主席)。香港眾志(Demosistō)には、雨傘行動で大学生のリーダーの一人だった羅冠聰(ネイサン・ロー)、日本のおじちゃんたちのアイドルで一連の「黒衛兵」の破壊行為を美化するプロパガンダを日本語で流し続けた、周庭(アグネス・チョウ)、雨傘行動の中高生のリーダーだった黃之鋒(ジョシュア・ウォン)ら、若き活動家が名を連ねる。ま、袁嘉蔚は羅冠聰と恋人関係なんだけど(笑)。
結果は4期連続無投票当選を続けていた陳富明は、新人の袁嘉蔚に1,589票の差を付けられ、惨敗。「半永久的」と田灣の誰もが疑わなかった建制派の天下が、一旦、幕を下ろした。
袁嘉蔚(ティファニー・ユエン)は選挙戦から押せ押せで、反対派のスターが続々と、田灣入りして応援を繰り広げた。
選挙当日には、米国の「香港人権法」成立のきっかけとなった公聴会で意見陳述した、歌手の何韻詩(シド・ホー)、人気歌手にして大女優の葉德嫻(デニー・イップ)、香港眾志の周庭、民主党元老の楊森が駆けつけ、まさに反対派「オールスター」応援。ほかにも特区政府元司法官の陳方安生(アンソン・チャン)も袁嘉蔚に熱いエールを送るなど、陳富明を圧倒した。オタク的には、葉德嫻と何韻詩が田灣に来るなんて、びっくり仰天なんだが(笑)。
こうしたオールスターの応援もあって、4,191票対2,602票という結果となった。得票比率ではおよそ6:4。今回の區議會選舉と同じ結果。田灣も伝統的に田灣に住む者(圧倒的に親中派支持者が多い)と、2000年代初頭に山側に造成された公営団地「田灣邨(Tin Wan Estate)」や続々と建設されてゆく高層アパートメントに入居する他エリアからの流入者(民主派支持傾向が強い)の間で、コミュニティの分断が進んでいるということだろう。1996年~2009年まで住んで、この変化は肌感覚でよくわかる。
ちなみに当選した袁嘉蔚、小生が住んでいたアパートメントの同じ棟に住んでいる(笑)。どうでもいいか(笑)。
さて、長年にわたって田灣の区議会議員を務めた陳富明だが、地道に民生に徹していた。歩道橋のエレベーター設置、豪雨による土石流被害の復興、農暦新年恒例の獅子舞巡幸のアレンジ、盂蘭盆の行事、返還記念日の街の装飾…。住民の信頼も篤かった。「建制派なんてとんでもない」と思っている小生でさえ、「おっちゃん、頑張ってるやん」と思っていたほどだ。
一方で、ここ最近はちょっと慢心があったのも否めない。町内唯一のメジャーなスーパーの入るビルがインター校になるという由々しき問題に対しては、反対とも賛成とも態度を明確にしなかったし、町内の2軒のホテルに殺到する大陸旅団の送迎バスによる不法駐車、あふれ返る大陸旅団による歩道の占拠状態という「被害」にも消極的だった。それらの問題解決に積極的に関与したのが、香港眾志であり袁嘉蔚(ティファニー・ユエン)、黃之鋒(ジョシュア・ウォン)だった。住民の心が陳さんから離れつつあったとき、この選挙だ。仮に、一連の騒動がなかったとしても、袁嘉蔚が当選していたかもしれない。
事程左様に、区議会議員とは「民生一筋」に徹してこそ存在意義があるというもの。袁嘉蔚も自身のFacebookで当選後に決意のほどを記していたが、その決意表明通りに田灣の民生に尽くしてもらいたい。これまで民主派系の区議会議員は、民生は二の次でやたらと「政治を語る」者が多かったが、それでは民心が離れるのも時間の問題だろう。そういう意味では、袁嘉蔚の決意表明が「五大訴求,缺一不可(五大要求、一つも欠けてはならない)」という一連のデモのスローガンで締めくくられていたのが、なんともはや…、なハナシである(笑)。それ言うたら価値がないがな、お嬢ちゃん!
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。