【反送中】中共の堪忍袋の緒は、いつ切れるのか?

しかし、何べん見ても凄まじい迫力ですな、催涙弾発射の瞬間というのは…。

色んなことが次々と起きて、ブログも追いつかない今日この頃の香港。それらは、ブログにするのが気が重くなるような事ばかり。疲れるのでちょっと日にちを置いてはみたが、一応、ブログは備忘録という意味合いでやっているので、さらっと起こしておくことにした。って、言うてるうちにも、また次なる事態が起きるという、まったく気の抜けなくなった香港。これは辛いね…。

六四屠夫、李鵬死す

六四屠夫=天安門事件の虐殺者」と言われた李鵬元首相が、7月22日、亡くなった。90歳だった。

下の写真は、1989年5月18日、当時の李鵬首相ら共産党幹部が、天安門広場で民主化運動を繰り広げていた大学生の王丹や柴玲、吾爾開希(ウーアルカイシ)らと会見したときのもの。李鵬死去のニュースに、自身のTwitterで「李鵬が死んだ。彼はゲス野郎だった」と呟いた吾爾開希だが、時の首相や党の幹部にパジャマ姿で会いに行く彼も、相当なゲス野郎だと思うが…。

昨今の香港の混乱は、1989年6月4日に起きた天安門事件での、香港市民の中国共産党に対する不信感が根元にあるのは、言うまでもない。李鵬は、天安門広場に集った民衆を、人民解放軍によって鎮圧する指示を出した張本人とされているが、真相はわからない。ただ、強硬手段で鎮圧するに至った政策決定過程の中心的存在だったと、広く認識されていることから、香港における「六四」抗議デモや追悼集会では、必ず「李鵬下台=李鵬首相辞任」がコールされてきた。

この不信感は今なお、香港市民の間に根強い。「反送中=逃亡犯条例改正反対」のデモが毎週起きているのもその不信感からだ。つまりは、「反送中デモ」は、中国共産党に対する抗議デモであり、一見、抗議対象となっている香港特区政府だが、実際には、中共への不信感や不満を受け付ける「カウンター・パーソン」という位置づけと言えるだろう。

43万人、怒りの隊列

まさに「糞食らえ」な林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官(笑)。いつもこういうの上手いこと作る「職人」がいて、重いテーマのデモだけど、ちょっと笑わせてくれるのもまた、香港人気質のいいところ by “商業電台”

7月21日の日曜日も、当たり前のように「反送中デモ」。もう43万人(主催者発表、警察発表は13万8千人)とかじゃ、驚かなくなったね、この一連のデモも。民間人權陣線(民陣)が主催したものだけでも、今回で6回目。ピークは6月16日だけど、いまだ勢いは衰えず、というところだ。

『ドラゴン怒りの鉄拳』ならぬ、「香港市民、怒りの隊列」である。この香港人力量は尊敬に値する

今回はコースをめぐって、民陣と警察の間で攻防があった。

民陣は本来ならば、21日夜に立法会ビルと特区政府本庁舎周辺で集会を行う計画だったが、警察側からは安全上の理由から8月に先送りできないかとの提案。これを受けて、午後3時に銅鑼灣(Causeway Bay)のビクトリア公園から中環(Central)セントラルの終審法院(旧・立法会議所)までのデモ行進に計画変更。19日に警察から「非反対通知=申請許可」が出たが、「終着点は灣仔(Wan Chai)の盧押道(Johnston Road)と莊士頓道(Johnston Road)の交差点、午後9時までに終了のこと」という条件付きだった。実質、立法会ビルや政府庁舎のある金鐘(Admiralty)への立入阻止という形となった。

いつも民主派デモの度に、プロパガンダ映像を流す共産党傘下の『大公報』のスクリーンだが、この日は故障した模様(笑) by “商業電台”
金鐘付近の幹線道を一時封鎖したデモ隊。これは「違法集会」であり、「公道の不法占拠」だが、あえて警察は強硬手段は講じず

しかしデモ隊は「一路向西=西へひたすら進め」とばかりに、灣仔から金鐘へ向けて行進を続け、道路を占拠する。そして例のごとく、ヘルメットにゴーグル、マスクを装着した過激な一群は、さらに西へと向かう。

午後7時過ぎには、一派は西營盤(Sai Ying Pun)の中央人民政府駐香港特区連聯弁公室=中聯弁を取り囲み、代表が普通話と英語で「五大要求」(逃亡犯条例改正案の完全撤回、警察の暴力に対する謝罪、デモ隊への暴徒扱いの撤回と謝罪、逮捕者の即時釈放、林鄭月娥行政長官辞任)に加え、立法会解散の行政命令などの要求を読み上げ、「守護香港(あらゆる方法で香港を守護する)」を宣言。

その後、一派は中聯弁の正門に向かって、生卵を投げつけ、スプレーペンキで監視カメラを破壊し、挙句は中華人民共和国の国徽に黒いペンキを投げかけるなどの暴行を開始。塀には「支那」「支連弁」などの文字をスプレーで落書きし、やりたい放題。

あ~あ、やっちゃいましたね… by “立場新聞”

完全に、中国のメンツは丸つぶれである。まさに、中国政府に真っ向から喧嘩を売った瞬間である。翌日、中央政府報道官はえらい憤慨してはったけど、どういう手段を講じてくるのか、これは目が離せないし、えらい時代に突入したなと感じた。別に「暗黙の了解」があったということもないのだろうが、中聯弁へデモに押しかけても、こういう行動だけは控えてきた香港市民が、過激な一部の人士の仕業であっても、世界中の報道カメラがレンズを向ける目前で、ついに、この行動だ。そういう意味で、ホンマえらい時代になったと痛感するのである。

最初から警察を攻撃する気満々の「居残りデモ隊」。歩道のレンガを引っ剥がして、投石準備完了! by #BBC中文網”

さらに9時ごろからは、中聯弁の向かいの西區察署にもレンガを投げるなど、行動がさらに過激化する。警察は午後10時すぎ、「黒旗」さらには「橙旗」を出して、催涙弾使用を宣言し、排除行動開始。

こちら「黒旗」。「催涙弾、やっちゃうよ」との予告
そして最上級警告「橙旗」。「撃つぞ!」ってやつ。予告通り、ゴム弾を撃ち込む
次々と撃ち込まれる催涙弾
対するデモ隊は「ゴム鉄砲」で応戦!漫画か!

結局、完全強制排除が達成されたのは、翌22日の午前3時前のこと。小生からすれば「警察も何をもたついてんねん!」ってところだが、これまでの経緯からすれば、仕方ないか。今、警察は何をやっても世間から批判されるという辛い立場。職務を忠実に全うしているのに、これは気の毒だ。

と、ここまではもう、デモですっかり定番化してしまった感のあるパターン。ここから先が新展開。予期せぬ事態となってしまった。

黒社会も参入し、新たな展開へ?

日本でも大きく報道されたが、新界のMTR西鉄線の元朗(Yuen Long)駅で、白いシャツにマスクの「いかにも」な集団が、黒い服装のデモ帰りと思しき市民らを集団で襲撃する事件が発生した。

白い集団は元朗駅のコンコースやホーム、停車中の車両にまで乗り込んで、乗客らを竹で作られたムチ状の棒や、棍棒などで無差別に襲撃した。惨状は、スマホで撮影した映像や写真がSNSに続々と投稿され、瞬く間に世界中に拡散してゆく。フロアには多数の血痕、倒れて動けない人たち、白い服を着ているにもかかわらず襲撃された妊娠3か月の妊婦(母子ともに健康との報あり)…。まさに地獄絵図。

市民に襲い掛かる白い集団
ボコられる元TVBアナウンサーの柳俊江(ライアン・ラウ)。現在は、司会者、コラム作家、俳優として活躍中で、小生の映画評にも度々登場。顔が知られているだけに、狙い撃ちされたか

上記はBBC中文網のYou Tube。居合わせた市民はどれほど恐怖を感じたことか…。

しばかれまくった負傷者の傷を見よ!痛かったやろうな、怖かったやろうな by “香港01”

MTRは午後11時ごろ、列車の同駅停車を一時見合わせ、駅を閉鎖。襲撃によって45人が入院し、26日朝の時点で依然、4人が入院、危篤1人、重体1人と言うから、恐ろしい。MTRを運行する香港鉄路や現場の市民は、再三にわたって警察に通報したが、警官らは「中聯弁の強制排除で人員不足」のため、なかなか到着しない。なんや、その「口実」は? 結局、白い集団のうち、わずか6人だけ現場で違法集会容疑で逮捕した。いやいや、「集会」やないでしょ、殺人未遂の現行犯でしょ? 警察全面支持の小生だが、この夜に関しては、警察の後手すぎる行動に、疑いどころか「怒り」を禁じ得ない。疑い、そりゃもう黒社会との癒着でしょ。もちろん、警察は完全否定しているけど…。

この日は、夜に「元朗守護者」主催による「光復元朗(元朗を取り戻せ)」なるデモが行われており、白服姿で香港特区旗を持った数千人が参加していた。新界というのは、なかなか「現代香港」の常識では理解できない閉鎖的な面があって、原住居民(香港が香港でなかった時代から住む住民の末裔)の権利を守ることが第一義の土地でもある。集団が逃げ込んだ南邊圍村などもその一つだ。「光復元朗」も、「反送中デモ」参加者を村から排除したいという発想からのものと思われる。

で、この逮捕された6人、調べでは「三合会=香港黒社会ネットワーク」関係者で、「14K」および「和勝和」の構成員だとのことだ。元朗は従来から14K和勝和の一大活動拠点として知られており、警察と「なーなー」な関係を維持していても不思議ではないエリアだ。それだけに、周潤發(チョウ・ユンファ)の映画の世界が実在している…、なんて思いたくないが、思われても仕方ないな、今回を見る限りは。

誰が彼らを動かしているのか?

で、黒社会に襲撃指示を出したのは、一体誰なのか? 真相は不明だし、多分、永遠に不明だと思う。「はい、それ私です!」って手を挙げるバカはいないだろうしね。

親中派無所属の立法会議員、何君堯(ユニウス・ホー)が白い集団らしき男たちと道端で握手し、「あなたたちは、英雄だ」と称賛する動画がネット上で流れている。何議員が指示出ししたのか? いや、小者すぎるだろう。当の何議員は食事後に通りかかったら、記念撮影を求められただけと、関係を否定しているが、どうなんだろう…。そしてまた再び、白い集団の襲撃はあるのだろうか。いよいよ、「反送中デモ」も命がけとなってきた。市民が萎えてしまわないことを祈る。

この一件で言えることは、英字紙『South China Morning Post』の盧建霊記者が自身のTwitterでつぶやいた一言に尽きる。「香港のデモ参加者が疑問に思っているのはただひとつ、警察はどこだ?」。小生の大好きな香港警察、これ以上、市民の不信を買うようなことはやめてくれ。

いまのところ、現実味を帯びつつある解放軍の出動について、香港特区政府は「ない!」としているが、これとて、どうなることか…。中国共産党、いつ本気でブチ切れるのか…。いや、とっくの昔に香港にはブチ切れているだろう。というわけで、表題の『中共の堪忍袋の緒は、いつ切れるのか?』の答として、「切れている」ということになる。ただ、実際行動には移していないだけのこと。準備は万端だと、心得ておいたほうがいいのかもしれない…。





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