【睇戲】『デトロイト』(英題=DETROIT)

『デトロイト』
(英題=DETROIT)

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

珍しく、米国映画を観た。
まあ、アレですよ、新聞社のよくやってる「試写会」ってやつ。「来ないか?」とお誘いいただいたので、厚意に甘えたという次第。

detroit-movie-poster-15x21-in-2017-kathryn-bigelow-john-boyega英題 『DETROIT
邦題 『デトロイト』
製作年 2017年
製作地 米国
言語 英語

評価 ★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

監督:キャスリン・ビグロー

出演:ジョン・ボエイガ、ウィル・ポールター、ジャック・レイナー、ベン・オトゥール、オースティン・エベール、ジョン・クラシンスキー、アルジー・スミス、アンソニー・マッキー、ジェイソン・ミッチェル、ジェイコブ・ラティノア、ハンナ・マリー、ケイトリン・デヴァー、ネイサン・デイヴィス・Jr、ペイトン・アレックス・スミス、マルコム・デヴィッド・ケリー 他

いやいや…。新年早々、きっつい映画観たもんだ。
1967年7月に起きたデトロイトでの暴動を題材にした問題作というこの作品、なるほどこれは問題作だ。そして米現政権や排外主義者を挑発しているかのようでもある。言い換えれば、50年前の米社会と現在と何も変わっていない、進歩もないということか。

作品が描く「デトロイト暴動」は、米国で1960年代に起きた暴動の中でも最大級のもので、死者43人・傷者1189人・逮捕者7200人を出した。1967年7月23日、デトロイト市警は違法酒場の摘発を行ったが、その手法に不満を持った市民が警官隊に投石を始め、警察への反抗は次第に拡大し、暴動へと発展してゆく。
根強い黒人差別が引きおこした、現職警察官たちによる「暴動鎮圧」と言う名の暴力を濃厚に、これでもかと見せつける。そのため、上映時間142分はあまりにも長く、重たく、まるで自分がスクリーンから暴行や拷問を受けているかのような錯覚に陥るのであった。
中でも、黒人への激しい差別意識をむき出しにする警官・クラウスは、ほとんど性格異常者であった。映画では、何が彼をあそこまで非情にしたのかという点が、明らかにされてはいなかったが、恐らく、50年前の米国の白人社会ではごくふつうのことだったのかもしれない。これを演じたウィル・ポールターが素晴らしく良かった。あの表情というか「眉毛力」はこれ以上ない適役で、黒人警備員・ディスミュークスを演じたジョン・ボエイガ共々、圧倒的な存在感で迫ってきた。

公開直前なので、これ以上のことには触れないが、「試写会」ってのは、「気に入ったら、ぜひ公開後には劇場に足を運んでね!」っていう、配給側のきっかけづくりなわけだが、小生は、おなか一杯どころか食あたりすら起こしそうだったので、公開後に劇場へ行くのは遠慮しておく。

ま、きつい内容の作品だけど、モータウン・サウンドが効果的に使われており、こっち系の音楽が好きなら、それ目当てで観てみるのもいいかもしれない。実際、デトロイトはモータウン発祥の地として有名だ。また、メンバーが事件に巻き込まれてしまった黒人R&Bグループのザ・ドラマティックスは、モータウン所属ではないが、現在もメンバーチェンジを繰り返しながら活動中だという。

小生的には、デトロイトと言えば、「アラビアの怪人」との異名で、全日本プロレスを代表する凶悪レスラーだったザ・シークが全米トップクラスのプロモーターとして君臨していたことで、馴染みある都市である。

この試写会の数日前に読み終えた香港人作家・陳浩基の『13・67』では、1967年に起きた「香港暴動」が描かれている。デトロイトで黒人差別を背景とした、米史上最悪の暴動が起きていたころ、香港では大陸の文化大革命を背景とした暴動が起き、中英全面衝突まで一触即発という事態に陥っていた。まったく背景も事情も異なる二つの暴動だが、結局は対立、分裂、排他が引き起こしたという点で、今の世界情勢も似たようなもんかいな~と、映画を観ながら思ってみたり。ま、制作意図にはそんなことも含まれているんだろう。
そう言う観点で観ると、こういう映画が、商業ベースで上映できる米社会は、まだ香港ほど堕ちてはいないようだ。人種差別へのアンチテーゼを対中批判、反共に置き換えた場合、すでに香港ではほとんどの劇場が、そうした作品の上映を渋るという嘆かわしい状況である。

アカデミー賞最有力候補だとのことだが、はてさて…。

DETROIT | Official Trailer

(平成30年1月17日 大阪商工会議場国際会議ホール)




   


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