【今年読んだ本 2017】披露するほどではないですが。

恒例により今年読んだ本あれこれ。
おすすめ本には、「読書メーター」に記した感想をアレンジした一文を添えた。

蔡英文 新時代の台湾へ』 蔡英文
白水社 2,502円 1月11日読了
同じ「民進党」の女性党首でもこれだけ違うのかと、まずそこに目が行ってしまう(笑)。2016年5月の総統選で政権を奪回し、初の女性の中華民国総統に就いた蔡英文が、総統選前に現地で出版したマニフェストともいうべきものであるが、そこかしこに見え隠れする彼女のパーソナリティーもまた興味深く、なるほどこの人柄なら選挙に勝つのも当然だなと思わせる。そこに至るまでに彼女が何をしてきたかということが綴られているが、その間にいかに彼女自身の考え方や行動が変わっていったという足取りが読み取れる。一方で、鳴り物入りで当選を果たしはよいが、就任以降は支持率が不調で何かと批判される彼女、その理由もこの「足取り」を読めば、納得できるものがある。日本にとっても信頼できるパートナーの一人だとは思う。

悟浄出立』 万城目学
新潮文庫 529円 1月22日読了

一日に一字学べば……』 桐竹勘十郎、聞き書き・樋渡優子
コミニケ出版 1,814円 1月30日読了

上野池之端 鱗や繁盛記』 西条奈加
新潮文庫 637円 1月31日読了

肉体の学校』 三島由紀夫
ちくま文庫 670円 2月6日読了

首折り男のための協奏曲』 伊坂幸太郎
新潮文庫 724円 2月17日読了

バイ貝』 町田康
双葉文庫 590円 2月24日読了

青春の賭け 小説織田作之助』 青木光二
講談社文芸文庫 1,620円 3月6日読了

しゃぼん玉』 乃南アサ
新潮文庫 562円 3月12日読了

コーヒーと恋愛』 獅子文六
ちくま文庫 950円 3月20日読了
i(アイ)』 西加奈子
ポプラ社 1,620円 3月25日読了

増山超能力事務所』 誉田哲也
文春文庫 691円 3月31日読了

活版印刷三日月堂 星たちの栞』 ほしおさなえ
ポプラ文庫 734円 4月6日読了
活版印刷所「三日月堂」を訪れる人たちが、活版印刷と出会うことで、自分の過去を振り返り、語るという物語が綴られているが、活版印刷にはそんな力が本当にあるのかもしれない。僕らの世代が恐らく「活字を拾う」作業を、実際に見たことがある最後の世代だと思うが、作中にもあるように、最近は若い人の中にも活版印刷の魅力に惹かれる人も多いようだ。手間暇かかる作業だが、この技術は確実に継承していってもらいたいと思う。初めての作家さんで、だれの会話文か判別しにくい個所も散見するが、それも含めて手作りの温かさが伝わる良い作品だった。続編の『活版印刷三日月堂: 海からの手紙』も読後感、非常に良し。

文楽・六代豊竹呂太夫: 五感のかなたへ』 六代豊竹呂太夫、片山剛
創元社 2,160円 4月11日読了

台湾とは何か』 野嶋剛
ちくま新書 929円 4月12日読了

悪意の手記』 中村文則
新潮文庫 464円 4月18日読了

星に願いを、そして手を。』 青羽悠
集英社 1,728円 4月26日読了
16歳がこんないい作品を書くんやと、まず感嘆してしまう。「だから、人は選ぶんです。自分には抱えきれないから、道を決めて、道を捨てるんです」なんて言葉、絶対に16歳だった俺からは出てこないから(笑)。登場人物分の語り部を設けず、絞ったのもよかったのではないかな。それによって物語がくどくならず、さりとて薄味にもなりすぎていなかったし。多くの人、とりわけ中高生には是非とも読んでほしい作品。ちなみに、小生の御幼少のころに流行ってた荒木一郎の「空に星があるように」が、脳内リプレイしていた。歳がわかるね(笑)。

ご本、出しときますね?』 編・BSジャパン、若林正恭 登場する作家:西加奈子、朝井リョウ、長嶋有、加藤千恵、村田沙耶香、平野啓一郎、山崎ナオコーラ、佐藤友哉、島本理生、藤沢周、羽田圭介、海猫沢めろん、白岩玄、中村航、中村文則、窪美澄、柴崎友香、角田光代、尾崎世界観、光浦靖子
ポプラ社 1,620円 5月6日読了

阿蘭陀西鶴』 朝井まかて
講談社文庫 756円 5月8日読了

オレたちのプロ野球ニュース: 野球報道に革命を起こした者たち』 長谷川晶一
TOKYO NEWS BOOKS 2,160円 5月9日読了

よるのふくらみ』 窪美澄
新潮文庫 594円 5月13日読了

夜会服』 三島由紀夫
角川文庫 562円 5月21日読了

ビリジアン』 柴崎友香
河出文庫 734円 5月26日読了

さぶ』 山本周五郎
新潮文庫 767円 6月4日読了

自由学校』 獅子文六
ちくま文庫 950円 6月13日読了

19歳 一家四人惨殺犯の告白』 永瀬隼人
角川文庫 605円 6月15日読了
さる12月19日、上川陽子法相から、千葉県市川市で1992年に会社役員一家4人を殺害したなどとして、強盗殺人罪などで死刑が確定した事件当時19歳の関光彦(てるひこ)死刑囚(44)=東京拘置所=の死刑を執行したとの発表があった。本書が追った「19歳」である。そんな彼の取材を綴った本書は、とても息苦しい一冊だった。行間から、紙から、本から血の臭いが漂ってきそうだったが、なんとか読み終える。読み終えてなお、息苦しい。人それぞれだろうけど、凶悪殺人犯って、全てこんな感じなんだろうか? で、あるなならば、何年かの服役の末に死刑となって罪を償ってもらうしかないだろう。取材を重ねていくうちに著者が自律神経失調症に追い込まれ、危うく命を落とす寸前だったのに比べ、犯人の神経は…。そりゃ「理解不能」だわな…。

オー!ファーザー』 伊坂幸太郎
新潮文庫 853円 6月22日読了

ナオミとカナコ』 奥田英朗
幻冬舎文庫 823円 6月30日読了

「小池劇場」が日本を滅ぼす』 有本香
幻冬舎 1,404円 7月2日読了

汝、ふたつの故国に殉ず ―台湾で「英雄」となったある日本人の物語―』 門田隆将
角川書店 1,944円 7月4日読了
この数年、映画や書物を通じて、台湾から日本史を学ぶ機会が非常に多い。二二八事件、その後の白色テロから戒厳令解除までの台湾、とりわけ本省人の苦難は、映画『非情城市』などで知る範囲だったが、二二八事件がこれほどまでに残虐なものだったとは、そして多くの台湾人の命をその残虐行為から救った日本人がいたとは、この本を手に取って初めて知る史実であった。その日本人の命日が台南市の「正義と勇気の記念日」になっているとことも初めて知った。重厚なノンフィクション小説だが、特に湯徳章こと坂井徳章が国民党軍に連行され、銃殺されるまでの数十ページは胸が締め付けられる。この英雄のことはもっと日本人に知られてしかるべきだろう。

狐火ノ杜 ─ 居眠り磐音江戸双紙 7』 佐伯泰英
双葉文庫 700円 7月8日読了

教団X』 中村文則
集英社文庫 864円 7月16日読了

最弱球団 高橋ユニオンズ青春記』 長谷川晶一
彩図社 700円 7月18日読了

路地の子』 上原善広
新潮社 1,512円 7月20日読了
『新潮45』に連載中は、このためにだけ毎月購入していたほど、熱中した。色々な出来事や風景を思い出し、様々な人物も頭に浮かべながら読む。小学4年くらいに、突如、授業に『にんげん』なる副読本が登場し、更池も向野もまったく知らなかった僕らにも、唐突に同和教育の強化が開始された。子供心に違和感を抱く。それは、本書でも取り上げられている社会党系の解同と共産党の対立構図が明確になっていく時期と重なる。著者の父・龍造がその対立の渦中に入って行くくらいの時期でもある。日教組=社会党という構図からすれば、『にんげん』が小学校の教育現場に出現するのも必然の流れだったのかもしれない。社会的背景は抜きにしても、己の才覚や嗅覚を信じて、食肉業でのし上がってゆく龍造の生き方には、強く惹かれるものがあった。

青春怪談』 獅子文六
ちくま文庫 950円 7月28日読了

孔子を捨てた国 現代中国残酷物語』 福島香織
飛鳥新社 1,300円 7月31日読了

プラージュ』 誉田哲也
幻冬舎文庫 745円 8月10日読了

アイネクライネナハトムジーク』 伊坂幸太郎
幻冬舎文庫 648円 8月17日読了

佐賀北の夏』 中村計
集英社文庫 540円 8月20日読了

』 東山彰良
講談社文庫 950円 8月25日読了
あまりにも面白くて一気読み。この時代の台湾はいくつかの台湾映画でも観て来たので、時代の空気感がカラー映像で容易に頭に浮かんできたので、読みやすかったのだろう。「わたし=葉秋生」の青春物語にして、葉一族、とりわけ祖父の葉尊麟と義叔父の宇文の過去を解き明かしてゆく、「わたし」の人生の遠大な旅紀行という感じもした。抗日戦争、国共内戦、日本以後の台湾、三不政策など、台湾を取り巻く環境の転変も興味が尽きない。中国語の諺や四字熟語も効果的に使われており、激しい物語の合間でクスッと笑わせてくれた。ひとつひとつ、ネタ帳に書きとどめておきいほどだ。この物語の先の「わたし」を思うと、切なさを禁じ得ない…。

ライオンズ、1958。』 平岡陽明
ハルキ文庫 691円 8月28日読了
ガチガチのホークスファンだけど、子供のころ、大阪球場の三塁側スタンドからファンが埋まってゆく西鉄(~太平洋クラブ~クラウンライター)ライオンズが嫌いではなかった。そのまだちょっと昔のハナシ。稀代の天才打者・大下弘、地元紙の若い西鉄番記者、そして「伝説のやくざ」が織りなす、熱い男の物語で、読んでいくうちに何度もウルッとしてしまった。これが実話かそうでないかは関係なく、三人のそれぞれのわかりやすいシンプルな、それでいて情の深い生き方に、深い感銘を受けた。「血の通う人間」とは、こういうことだろうなと感じた。一方で、後に起きる「黒い霧事件」の萌芽がこの時代すでにあったことも知る。パ・リーグファン、特に21世紀のパ・リーグしか知らないファンにお奨めの一冊。

関東戎夷焼煮袋』 町田康
幻戯書房 1,944円 8月31日読了

複雑な彼』 三島由紀夫
角川文庫 720円 9月8日読了

幻坂』 有栖川有栖
角川文庫 691円  9月15日読了
我が家からは、チャリでもシュッと行ける「天王寺七坂」。7つの坂道と芭蕉終焉の地、そして夕陽庵の物語を、ちょっと怪異風に仕立てた短編集。怪異と言っても、後に引きずるような怖さはなく、むしろ「これ、人形浄瑠璃とか落語にしたらイケそう」という物語ばかり。そこらへん、やっぱり大阪の作家さん。七坂にまつわるエピソードや故事来歴をうまく散りばめて、訪れたことの無い人にも、画が思い浮かぶようにしている。芭蕉の辞世の句「…隣は何をする人ぞ」の「隣の人」、ああ、人生の終わりにこういう隣人と出会うわけかと。これは新解釈か!? とにかく納得の「2017年度大阪ほんま本大賞」受賞作。いい読書ができた。

習近平の中国――百年の夢と現実』 林望
岩波新書 886円 9月22日読了

廃校先生』 浜口倫太郎
講談社文庫 842円 9月26日読了
作者は、朝日放送23時台の人気番組『ビーバップハイヒール』『たかじん胸いっぱい』など、大阪でおなじみの人気テレビ番組を手掛ける売れっ子放送作家。それだけに、まあ、話の「持って行き方」の上手いのなんの。って言いながら、何度も涙腺決壊しながら読み終える。十津川の小学校の廃校までの1年間を、6年生の児童3人と、担任、副担任の物語を中心に紡いでゆく。子供たちはそれぞれに、悩んだり屈折した思いを抱いていたりする。担任と副担任、さらには他の先生や校長、家族、村の人たちが、その思いを一身に受け止めて見守っている光景が、すごくうらやましく思った。学び舎に対する村の人たちの思いにも、胸が熱くなった。こうして教育は「受け継がれて」ゆくのだなと。今年一番のおすすめ本!、かな。

新版 女興行師 吉本せい: 浪花演藝史譚』 矢野誠一
ちくま文庫 734円 10月3日読了

僕が殺した人と僕を殺した人』 東山彰良
文藝春秋 1,728円 10月5日読了

朔風ノ岸 ─ 居眠り磐音江戸双紙 8』 佐伯泰英
双葉文庫 700円 10月11日読了

活版印刷三日月堂: 海からの手紙』 ほしおさなえ
ポプラ文庫 734円 10月20日読了

胡椒息子』 獅子文六
ちくま文庫 734円 11月9日読了

春の庭』 柴崎友香
文春文庫 691円 12月4日読了

さよなら的レボリューション 再見阿良』 東山彰良
徳間文庫 713円 12月18日読了

実録・国際プロレス (G SPIRITS BOOK) 』 Gスピリッツ編集部
辰巳出版 2,592円 12月29日読了
圧巻の624ページ建て二段組。数年にわたって隔月刊プロレス誌『Gスピリッツ』に連載されてきた国際プロレス関係者の証言集を一冊にまとめたもので全て既読だが、時間を忘れて読みふけってしまう。全日本=馬場、新日本=猪木という巨大勢力に大きく後れをとりながら、吉原社長以下、実直で人間臭いレスラーとスタッフが集った国際プロレス。TBSが全国ネットしていた昭和40年代から大好きだった(後に東京12chが中継し、近畿では2週遅れでサンテレビ、KBS京都で放映)。惜しむらくは、吉原、ラッシャー木村、グレート草津の三巨頭がいずれも故人で証言を聞けなかったこと。存命なら何を語っただろうかと、想像が膨らむ。リングサイドで観た木村vsジプシー・ジョーの金網デスマッチの飛び散る鮮血を懐かしく思い出す。

★★★

ってわけで、暇人は暇人らしく、54冊読破しました。まあ、去年が極端に少なかっただけで、これくらいは読まなきゃいかんでしょ、「趣味・読書」とプロフィールに書くような人間ならば(笑)。
毎年書いてるけど、やはり本との出会いは「天の配剤」。ある意味、運命づけられているのかもわかりません。読んで何かが大きく変わるわけではないけれど、それこそ「最低最悪な人間」と唾棄したくなる死刑囚から、「男の中の男やな~」と心酔するような偉人まで、様々な物語や真実に出会える喜びは、読書ならではのものであると思います。
その都度、本を読む楽しさに目覚めさせてくれた、幼いころの母の絵本の「読み聞かせ」の習慣に、大いに感謝するものであります。
で、ぐるりと「積読本」に取り囲まれている現状なので、当面は新しい本を購入する必要はないかもしれないけど、なにせほぼ毎日書店に通っているような奴だから、どんどん「積読本」が増えていくんだと思います(笑)。買ってから3年読んでない本も山ほどあるのにねぇ…(笑)。

拙ブログは、これにて今年最後。
いずれも様におかれましては、よいお年をお迎えください。

新年好!




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