『台北ストーリー』
(台題=青梅竹馬)
楊徳昌(エドワード・ヤン)の生誕70周年、没後10年を記念して、『牯嶺街少年殺人事件』に続いて公開されたのが本作。これ、記憶に間違いなかったら、日本でロードショウ上映されるのって初めてではなかったかな?いや、違うかも…。いずれにしろ、小生は初めて観る。『牯嶺街少年殺人事件』同様に、マーティン・スコセッシ率いるフィルム・ファウンデーションのワールド・シネマ・プロジェクトにより、4Kによるデジタル修復がなされ、今、改めて脚光を浴びることになった。
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
台題 『青梅竹馬』
英題 『Taipei Story』
邦題 『台北ストーリー』
製作年 1985年
製作地 台湾
言語 標準中国語、閩南語
評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督):楊徳昌(エドワード・ヤン)
編劇(脚本):楊徳昌、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)、朱天文(チュー・ティエンウェン)
音楽:友友馬(ヨーヨー・マ)
領銜主演(主演):蔡琴(ツァイ・チン)、侯孝賢
主演(出演):呉念眞(ウー・ニエンチェ)、柯一正(クー ・イーチェン)、柯素雲(クー・スーユン)、呉炳南(ウー・ヘイナン)、梅芳(メイ・ファン)、陳淑芳(チェン・シューファン)、頼得南(ライ・ダーナン)
侯孝賢(ホウ・シャオシェン)が若い! 毛もフサフサ(笑)。呉念眞(ウー・ニエンチェ)も若い! そりゃそうだわな、1985年の映画。32年前。俺、まだ大学生(笑)。時代は、戒厳令解除前夜の台湾が一気に発展してゆくころ。晩年を迎えた蒋経国が、民主化、自由化へ一気に舵取りを始めていた時期である。そんな時代のうねりが、画面から伝わってくる。象徴的ななのが、何度も映された「富士相紙」すなわち、富士フィルムの大型ネオンサイン。『恐怖分子』の象徴的な画(え)が、カメラマンの部屋の壁一面に貼られた、女性の大型モノクロ分割写真であるのと同様、楊徳昌(エドワード・ヤン)の、今風に言えば「アイコン」の使い方の上手なところ。
原題の『青梅竹馬』は、中国語で簡単に言うと「幼馴染」というところ。蔡琴(ツァイ・チン)演じる阿貞、侯孝賢演じる阿隆、柯素雲(クー・スーユン)雲演じる阿娟が幼馴染で、さらに呉念眞(ウー・ニエンチェ)が演じる阿欽は阿隆とは少年野球時代からの友人である。この4人と4人を取り巻く人々の人間模様が、時代の流れが猛スピードで動いてゆく台北の街を舞台に描かれており、まさに当時の映画界に起きたうねり「台湾ニューシネマ」の鼓動を感じる。
迪化街の古い街並みが、多く映し出される急激な発展を遂げる台北の街並みと対照的である。迪化街が阿隆、新しい台北の街が阿貞を象徴しているかのようでもあった。そしてその谷間のどん底のエリアでもがき苦しむ阿欽…。楊徳昌はこんなことをスクリーンから伝えたかったのかな…。
さて、終わり方だが。阿隆があんな結末を迎えるとはなぁ。阿隆と同じように古いしがらみを捨てきれない小生には、結構つらい終わり方だったなぁ、と。小生は結構、彼が気の毒に感じられたが。いずれ阿貞は阿隆の結末を知ることになるんだろうけど、彼女はどんな気持ちでそれを知るんだろう…。「そこは観客のご想像にお任せします」ってところで「劇終」と相成る。
32年前の台湾映画だが、今の台湾映画よりも、綿密に構築された作品だった。『牯嶺街少年殺人事件』、『恐怖分子』同様に影や闇の使い方が非常に印象深く、上手だなと改めて感じた。
平日のレイトショーだったが、客入りもよかった。もっとも、公開当時はまったくヒットせず、台湾ではたった4日で上映が終了してしまったそうだが。やっぱり時代はまだ、楊徳昌(エドワード・ヤン)には追いつけていなかったなんだろうな。
(平成29年6月15日 シネ・ヌーヴォ)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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