人形浄瑠璃文楽
第34回文楽鑑賞教室
この季節恒例の「鑑賞教室」に行ってきた。平日はさぞかし行儀の悪い高校生が満員で、「鑑賞」もできたもんじゃないだろう、なんて、自らの高校生時分の行状を思い出して同じように考えていたが、どうも最近の高校生はお行儀がよいようで、ちゃんと聴いてくれるし、しっかり感想も語ってくれると言うから、みなさんお賢い。
とは言え、朝日座の二階席から眺めて、単に「わー、きれいな舞台やな、人形の衣装きれいやな~」って思ってただけの高校2年生の小生が、もうその最初の文楽体験から35年以上も文楽に通っているんだから、これはえらいもんである。こういうお子が一人でもおれば、鑑賞教室を毎年やる甲斐があるだろう。って偉そうに言いながら、相も変わらず「わー、舞台きれいや、衣装きれいや」くらいしか感想がまともに言えない小生ではあるのだが(笑)。
今年の「鑑賞教室」、ぜいたくなことに『忠臣蔵』である。これはもう出血大サービスですな!
二人禿
■初演:昭和16年(1941)4月、四ツ橋文楽座にて『春(里)げしき双草紙』として
太夫4人、三味線4人の掛け合い。前公演で酷評した掛け合いより、ずっと聴きやすかった。ってか、これが普通だろ。
人形は蓑紫郎と蓑太郎。こちらも標準。基本的に若手、中堅が中心の鑑賞教室だし、初体験の人に少しでも興味を持ってもらうための入り口だから、標準にやることが肝要。
解説「文楽へようこそ」
解説は、希太夫、寛太郎、玉誉。淡々としゃべる寛太郎が逆におかしかった(笑)。最近は「じゃあ、お客さんに人形遣ってもらいましょか」のコーナー無いねえ。たまに見てみたい(笑)。舞台背後のスクリーンで、色々映すのはいい試み。あれ、もっとほかの場面でも活用できると思うけど、どうかな?
仮名手本忠臣蔵
いやいや、この季節に忠臣蔵観られるとは思ってもみなかった。四月公演で今回の鑑賞教室の演目見て「ひょ~!」って思ったもん。もちろん、通し上演ではないけど、初体験のご見物も「刃傷の段」~「判官切腹の段」と続けば、「ああ、これね!」ってわかってもらえるだろうから、そういう意味では、いい出し物だなと思う。
「下馬先進物の段」 芳穂、清丈
「殿中刃傷の段」 咲甫、藤蔵
「塩谷判官切腹の段」 津駒、清友
「城明渡しの段」 亘、燕二郎
すべていい流れで、床がつながれていく。
刃傷~切腹、次第に高まる緊張感を、床と人形で引き上げてゆく文楽の「忠臣蔵」は、ほんと聴きごたえ、見ごたえ十分で、客席は水を打った静けさながら、この緊張に身を委ねているのがよくわかる。「切腹」は「通さん場」と言って、客の出入りは禁じられているというのが暗黙の了解だが、わざわざ了解を取り付けなくても、ここで出入りする奴はおらんやろ(笑)。もちろん、この日も出入りする人はおらんかった。が、床が引っ込むと同時に御不浄へ立つ人、チラホラ。辛抱してはったんやな(笑)。
「お前に1回だけ、太夫させたる」と言われ、ついてはどこをやりたいかと問われれば、間違いなく「城明渡しやります!」と答える。「ほぇ?御簾内で顔出しでけへんで?」って言われるかもしれないが、それでもやりたい。あの「『はった』と睨んで」の一言に、この物語のすべてが語られていると思うからだ。「うわぁ~、由良助、やっちゃうよ、この人~~!」って絶対思うもんね、あの一言聴けば。今回は、咲寿、亘、小住のトリプルキャスト、それぞれを聴きたいが、そうもいかず、この回は亘の出番。御簾内に向けて、大きな拍手が鳴る。かっこええな~、太夫の醍醐味やろうな~、やりたいな~。
人形は、師直が勘十郎、由良助が玉男、判官に清十郎と、いい顔ぶれが揃う。若手も随所に起用され、いい動きを見せていた。伴内の紋秀とか勘平の玉峻とか…、とか、とか…。
ま、なぜこの日に行ったかと言えば、勘十郎と玉男が揃うのは公演前半の午後の部だけなので、ここを狙ったっていうのがあるわな(笑)。
で、二週後は「若手会」。こちらは『菅原伝授手習鑑』。これも楽しみ。
(平成29年6月11日 日本橋国立文楽劇場)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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