第12回大阪アジアン映画祭
コンペティション部門|Special Focus on Hong Kong 2017
『姉妹関係』(濠題=骨妹)
3年前に開催された「マカオ映画祭in大阪」にて上映された『箪笥の中の女(濠題=櫃裡孩)』(12年、DVD発売時には『I’m Here 親へのカミングアウト』)の監督、徐欣羡(トレイシー・チョイ)の最新作にして初の物語長編映画。
香港返還の2年後だったためか、あるいは、返還前から順調に北京のコントロール下に治まっていっていたからか、日本人を熱狂させることのなかったマカオ返還だが、その後の社会の急激な変化は香港の変化にひけをとらない。香港というフィルター越しの中国、マカオというフィルター越しの中国、それぞれ違った見え方がすると思うのだが、どうも日本のメディアはマカオに冷たいね(笑)。
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
濠題 『骨妹』
英題 『SISTERHOOD』
邦題 『姉妹関係』
公開年 2016年12月(第1回マカオ国際映画祭)、2017年2月(香港、マカオで一般上映)
製作地 マカオ
言語 広東語、標準中国語
評価 ★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督):徐欣羡(トレイシー・チョイ)
領銜主演(主演):梁詠琪(ジジ・リョン)、廖子妤(フィッシュ・リウ)、余香凝(ジェニファー・ユー)、李李仁(リー・リーレン)
演出(出演):朱鑑然(ケビン・カム・イェンヌ・チュー)、陳蕾(パンサー・チャン)、車婉婉(ステファニー・チェ)、麥家琪(テレサ・マック)、江美儀(エレナ・ホンコン)、賈思樂(ルイス・カストロ)
主演の一人、19号を演じた廖子妤(フィッシュ・リウ)が第12回大阪アジアン映画祭「来るべき才能賞」に輝いた。
なんか聞き覚えある名前だと思っていたら、昨年の大阪アジアン映画祭で上映された香港作品『レイジー・ヘイジー・クレージー(原題:同班同學)』で真っ裸で出演していた女子三人のうちの一人だった。そうそう、昨年はこの子だけ来阪してなかったんだ。まさか、翌年に、この受賞があるってことを予測していたから、あえて来なかった…、なんてことはありますまい(笑)。この作品で、第36回香港電影金像奨「最優秀助演女優賞」ノミネート。
『骨妹』なんてタイトル見て、 「お!マカオのマッサージ嬢の実録ドキュメントか!」 なんて浮き足立ってしまった自分を、まず恥じる(笑)。まあ、マッサージ嬢の話には違いないんだけど、そこはいくらなんでもねえ、小生が期待するような快楽的作品であるはずがない(笑)。徐欣羡(トレイシー・チョイ)という監督は、上述の『箪笥の中の女』で、マカオの二人のレズビアンの成長物語を追った見事なドキュメント作品を見せてくれたことからも察せられるが、それは要するに彼女自身の物語という一面もあったわけで、決して「三級片(=18禁)」で小生を喜ばせてあげようという作品を撮る人ではない(はずだ)。
小生はまず、この作品が、産休していた梁詠琪(ジジ・リョン)の復帰第一作目ということに注目していた。結婚しようが子供を産もうが、ジジはやっぱりアイドルですよ、ホンマにねえ。で、そのジジは、廖子妤(フィッシュ・リウ)演じる19号こと詩詩が大人になった役を演じたわけだが、いい感じで歳を重ねていってるなあと見た。そういう役どころってのもあるけど、すごく落ち着きがあって思慮深さが身についたとでも言うか、なんかそういう感じ。復帰一作目ということで気合も入っていただろうし、ポスター撮影用にマッサージ嬢のユニフォーム姿にもなっていた。特にファンってわけではないけど、香港の町中で彼女の撮影現場に数度、出くわしているので「ご縁」を感じている(向こうはまったく感じていないけどw)。
徐欣羡監督は上映後の舞台あいさつで、 「ジジが出演してくれたのは、ラッキーだった。彼女は脚本を読んでとても気に入ってくれて、『是非やりたい』と即答してくれた」と語ったが、だからこそジジは丁寧に演じていたんじゃないだろうか。
さらにキャスティングで言えば、上述した廖子妤(フィッシュ・リウ)が「背の高いジジ(173㎝)と釣り合うように」という理由で選出されたと、徐監督が明かした。
返還(1999年12月)前のマカオが懐かしい。今のように外資系のカジノが豪華さを競いあうようなこともなく、マカオのカジノと言えば「リスボア」がその象徴であった時代。歴史的街並みや建造物が「世界遺産」に認定される前のマカオ。時間が穏やかにそして確実に返還へ向けて動いていた時代。そのマカオの歴史が動く夜、18号(余香凝/ジェニファー・ユー)と19号の「姉妹関係」も大きく動く。
「これ、やっぱりレズビアンの映画?」と勘違いしてしまうほど、濃密な「姉妹関係」だった二人なのに。この別れと新たなスタートに「マカオ返還」というシチュエーションはもってこい。監督の勝利!ってところだ。
劇中ではマッサージ嬢のリーダー的な存在だったが、「実際の私のキャラクターは全然似ていません。映画を見て、私のことをイヤな女だと思ったでしょうけど、実際はそうじゃないですよ」と強く念を多しながら可愛く語る余香凝(ジェニファー・ユー)。第36回香港電影金像奨「最優秀新人賞」ノミネート。
ちょっと、男の小生にはわかりにくい女性同士の友情、愛情、離別…を中心に物語が展開するだけに、「え?で、どうなの、それ?」な作品。女性客の中には感極まっている人も多く見かけたけど、正直、そこまで感情移入はできなかった。仕方ない、『骨妹』というタイトル、そして上に掲載したピンクのユニフォームのポスターに、普通の女性が垣間見ることのない場面を想像するようなゲス野郎ですから…(笑)。
《骨妹》終極版預告片
(平成29年3月11日 ABCホール)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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