恒例により今年読んだ本あれこれ。
『美麗島紀行』 乃南アサ
集英社 1,836円 1月3日読了
『香港 中国と向き合う自由都市』 倉田徹、張彧暋
岩波新書 864円 1月11日読了
『残り全部バケーション』 伊坂幸太郎
集英社文庫 605円 1月20日読了
『毛沢東 日本軍と共謀した男』 遠藤誉
新潮新書 886円 1月29日読了
『雪華ノ里-居眠り磐音江戸双紙4』 佐伯泰英
双葉文庫 700円 2月10日読了
『恋の都』 三島由紀夫
ちくま文庫 778円 2月16日読了
『巨鯨の海』 伊東潤
光文社時代小説文庫 756円 2月23日読了
『さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記』 井伏鱒二
新潮文庫 562円 3月9日読了
『五代友厚』 織田作之助
河出文庫 670円 3月25日読了
新装版『窓』 乃南アサ
講談社文庫 734円 3月29日読了
『流離 吉原裏同心』 佐伯泰英
光文社時代小説文庫 576円 4月4日読了
『ガソリン生活』 伊坂幸太郎
朝日文庫 842円 4月27日読了
『龍天ノ門-居眠り磐音江戸双紙5』 佐伯泰英
双葉文庫 700円 5月3日読了
『うれしい悲鳴をあげてくれ』 いしわたり淳治
ちくま文庫 842円 5月15日読了
『足抜 吉原裏同心』 佐伯泰英
光文社時代小説文庫 617円 5月22日読了
『被差別のグルメ』 上原善広
新潮新書 799円 6月1日読了
『人生に役立つ都々逸読本–七・七・七・五の法則』 柳家紫文
海竜社 1620円 6月29日読了
『沈黙の町で』 奥田英朗
朝日文庫 907円 7月18日読了
『千両かんばん』 山本一力
新潮文庫 724円 8月14日読了
『トム・ソーヤーの冒険』 マーク・トゥエイン
新潮文庫 637円 9月19日読了
『バカざんまい』 中川淳一郎
新潮新書 821円 9月29日読了
『つくもがみ、遊ぼうよ』 畠中恵
角川文庫 691円 10月5日読了
『死神の浮力』 伊坂幸太郎
文春文庫 842円 11月3日読了
『さくら聖・咲く: 佐倉聖の事件簿』 畠中恵
新潮文庫 637円 11月20日読了
『雨降ノ山-居眠り磐音江戸双紙 6』 佐伯泰英
双葉文庫 700円 11月30日読了
『蛍の森』 石井光太
新潮文庫 853円 12月14日読了
『月の上の観覧車』 荻原浩
新潮文庫 637円 12月25日読了
『飛田をめざす者: 「爆買い」襲来と一〇〇年の計』 杉坂圭介
徳間書店 1620円 12月29日読了
ここ数年は50冊前後のペースで、以前のペースに戻りつつあったのだけど、今年は28冊と目に余るペースダウン。これはいけません。理由はあれこれ思い浮かぶけど、そんなのを一々理由にしていては1冊も読めなくなってしまう。やっぱりねえ、ちゃんと本を読まないとバカになると思うのよ、あくまで自論だけど。そういう意味では今年は少しバカになってしまったかも(笑)。
わずか28冊にとどまったけど、やはり本との出会いは「天の配剤」。いずれも巡り合うべくして巡り合ったものばかりだった。甲乙つけがたいが、その中で特に印象深かったもの5冊、以下の如し。
1 『美麗島紀行』 乃南アサ
タイトルに紀行とあるが、呑気に美麗島=台湾を旅するための手引きには決してならない本。なぜなら著者が訪れた場所や店の所在地のデータなどが紹介されていないから。それでも、この本に書かれていること、著者が感じた事、聴いたこと見たこと触れたことは、日本人が知っておかねばならいことばかり。これまで何度も台湾に行ったけど不愉快な思いをしたことは一切ない。その背景にあるものをどのように上手く人に伝えればいいか…。言いたかったこと、人に知ってほしかったことを、きちんと伝えてくれている。
2 『恋の都』 三島由紀夫
『主婦の友』に連載されたのが1954年ということだが、物語の舞台はもう少し前のことだろうなと感じた。まゆみと五郎の恋の形などは、その時代ならではのものだと感じた。ただ、まゆみの周りの人たちの恋の形は、今も普通にある形。熟女に愛された末の心中未遂や、子供が3人おりながら結婚を後悔している中年男性の悲哀などなど、まさに「恋の都」というべき物語の数々が、主人公まゆみを中心に展開している。それにしても三島由紀夫、こういうお話もスイスイ筆が進んでいるのが、読んでいてよく伝わってきた。楽しい人だよ、きっと。
3 『さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記』 井伏鱒二
子供のころ、毎月1冊本を買い与えられていた。特に苦痛は感じず、買ってもらった本はすべて読破していたと思う。そのうちの1冊が『ジョン万次郎漂流記』だった。10歳の子供にとって、これほど刺激に満ち溢れた冒険譚はなく、それはもうワクワクしながら何度も読んだ。あれからおよそ40年、再びジョン万次郎に会えた喜び。はっきり覚えている個所もいくつもあり、子供のうちの読書ってすごいなと思った。『さざなみ軍記』は、文楽の『義経千本桜』のうちの「碇知盛」のスピンアウトもののような感覚で読んだが、都落ちしたこの平家の公達の行く末を思うと…。丁度頃合いのいいところで物語を終えているのが、この公達への愛というものか。
4 『沈黙の町で』 奥田英朗
「中学生ってこういうところあるよな」と、我が身を(40年近い昔だが)を振り返りながら読む。犯人探しに主眼を置かず、多数登場する人物そのものに迫った書き方=群像劇が作者らしい手法で、読者を引き込んでいく。死んでしまった名倉君は気の毒なところもあるが、全面的に情を以て彼を見ることができない部分がある。「とは言え…」と思ってしまう自分もまた、坂井君や市川君、その他女子や一年生部員まで含めた中学生たちと同じような目線で名倉君を見ていたのかもしれない。特に悪い人物は見当たらないが、名倉君の叔父だけは嫌な人物だった。
*名倉君:校内で遺体が発見させる。いじめが原因とされるが…。*坂井君や市川君:名倉君の死にかかわりのある同級生。
5 『蛍の森』 石井光太
あまりにも重い一冊だった。フィクションという名のノンフィクションであるのは、テーマがハンセン病ということから容易に察せられる。丁寧かつ綿密な取材を重ねる著者にしか書けない小説。偏見が差別に、差別がやがて暴力に、ついには殺人に至る恐ろしさを突きつけられた。ハンセン病差別という事実だけは知っているつもりだった自分の知識の貧弱さに、ずしんと撃鉄を打ちこまれた気分だ。国が謝罪してすべてが終わりというわけではないということを、改めて思い知らされた。今、人にもっとも薦めたい本である。
特に『美麗島紀行』と『蛍の森』は是非ともお読みいただきたいと思う。
今年のブログはこれで終了。今年も多数の方にお読みいただきありがとうございました。
また来年も楽しい読書ライフを送りましょう!
ではどなた様も、
新年好!
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。