素浄瑠璃
第18回 蝠聚会
毎年夏休み公演直後に開かれる「蝠聚会」は、文楽三味線の面々が義太夫節に果敢にチャレンジし、浄瑠璃を実際に語ることで今後の三味線演奏のプラスにしてゆこうという(多分ね)、まことに立派な心構えの会である。
今年もご丁寧に早々にご案内をお送りいただき、丁度、余人に代えがたい特殊な技能を要する委託業務がお休みだったこともあり、無事に現場へ駆けつけることが叶った次第。しかしまあ、きちんとご案内を送ってくれるとは、きっちりしてはる。気ぃがよろしいわな、こうしてもらえると。
蝠聚会
≪文楽三味線弾きが語る素浄瑠璃の会≫
碁太平記白石噺 浅草雷門の段
浄瑠璃/鶴澤清介 三味線/鶴澤清公
菅原伝授手習鑑 寺入りの段
浄瑠璃/鶴澤清允 三味線/鶴澤清丈
妹背山婦女庭訓 花渡しの段
浄瑠璃/竹澤宗助 三味線/野澤喜一郎
菅原伝授手習鑑 喧嘩の段
浄瑠璃/鶴澤清志郎 三味線/鶴澤藤蔵
卅三間堂棟由来 平太郎住家より木遣り音頭の段
浄瑠璃/鶴澤燕三 三味線/鶴澤燕二郎
昨年のこの会で「衝撃のデビュー」を果たした燕二郎くん、今年は師匠の燕三さんの浄瑠璃で三味線を弾くという、本公演では経験できない大役にトライ。まあねえ、彼は小さな体からは想像もつかない大きな肝っ玉の持ち主だから、一見、難なく涼しい顔でこなしていたかに見えたが、きっと緊張で口から心臓飛び出る心地で弾いていたと思うが、果たして?
で、燕三は久々に浄瑠璃聴かせてくれまして、情味たっぷりに。住さんがいつも言うけど「浄瑠璃は人柄が出る」と。この段を聴くに、そこには燕三はんの人柄が十二分ににじみ出てたんではなかろうか。燕二郎くん、ええ師匠につきましたな。
その燕二郎くんとは同期で、激しい競争を繰り広げる清允くんが今年は浄瑠璃デビュー。オーソドックスに「寺入り」で。「初めての浄瑠璃」でこんだけ出来れば申し分なし。相当練習したのか?あるいはそれほどお稽古しなくて、これくらいささっとできてしまうのか?真相は不明なれども、やはり耳がいいんだろうな(もちろん聴力のことではないw)。昨年の燕二郎ほどのインパクトは無かったが、それは「裏門」と「寺入り」の素材の違いでもあるので、比べてはいけない。
清介師匠、宗助はん、清志郎くんはもはや玄人の領域で、毎年、安心して身を任せることができる。特に清志郎は力感あふれる語りで、兄弟子の藤蔵のやはり力感ある三味線と張り合っているかのような語りが気持ちいい。帰り際、お見送りに出演者一同が出ていたが、藤蔵が清志郎を指し、「彼は大谷と一緒で二刀流ですわ」と笑いを誘っていたが、ほんまに二刀流でやっていけるで。
その帰り際、燕三師に「また聴かせてもらえてうれしかったですよ」と伝える。ごく軽度というものの脳こうそくで休演したのが、一昨年の今頃だったか。元気にこの場に戻って来ているのが嬉しい限り。
公演の方は、最後に出演者が並び、代表して清介師匠から挨拶。再来年は20回記念でこれを東京で開催したいと。それはそれで、大阪でも欠かさずにやってくださいね。最後は恒例の大阪締めでめでたく(何がめでたいかは不明w)お開きに。
充実したよい会だった。
(平成28年8月10日 日本橋国立文楽劇場小ホール)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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