【睇戲】『モンキー・マジック 孫悟空誕生』(港題=西遊記之大閙天宮)

『モンキー・マジック 孫悟空誕生』
(港題=西遊記之大閙天宮)

おなじみの『西遊記』。

香港に限らず、日本においても『西遊記』は数え切れないくらい、歌舞伎、文楽、映画、テレビドラマ、アニメなどで演じられて来ており、これほど年代の境なく日本人に広く受け入れられてきた中国文学作品はないだろう。

日本では『忠臣蔵』が、歌舞伎、文楽、映画、テレビ時代劇問わず「独参湯」と言われるように、中華圏では『西遊記』がその地位にあるようだ。

そして懲りもせず、と言っちゃぁ、申し訳ないが、今回もまた「西遊記」である。ここシネマート心斎橋では、2Dでの上映だが、大陸、香港など中華圏では3D上映され、記録的な大ヒット作となった。

大体、「香港で(大陸で)、史上空前の大ヒット作、ついに日本公開!」という謳い文句の大半は、眉唾ものと思って間違いない。このフレーズに何度裏切られてきたことか(笑)。やはりこういうのは、現地で、現地の観客の反応を見ながら、現地の社会情勢や現地の人間だからこそわかるギャグや言い回し、ちらっと姿を見せるゲスト出演者などがきちんと整理できていないと、「なんでこれで大ヒットなん?」となってしまうからね。そこは仕方ないかもな…。

まあそこは、日本人にもおなじみの『西遊記』。そう大きく期待を裏切ることはないだろう(ないよな?)、と期待してお座席に。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

TMK_MainPoster_1389337575港題 『西遊記之大閙天宮』
英題 The Monkey King』
邦題 『モンキー・マジック 孫悟空誕生』
現地公開年 2014年
製作地 香港、中国
言語 広東語

評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):鄭保瑞(ソイ・チェン)

領銜主演(主演):甄子丹(ドニー・イェン)、周潤發(チョウ・ユンファ)、郭富城(アーロン・クォック)、何潤東(ピーター・ホー)、陳喬恩(ジョー・チェン)、陳慧琳(ケリー・チャン)、梁詠琪(ジジ・リョン)

主役の孫悟空には、小生と生年月日が全く同じで、星座占い、干支占い、四柱推命などあらゆる占いを真っ向から否定してくれたあの男、甄子丹(ドニー・イェン)。悪役の牛魔王には、かつてのアイドルでいまや押しも押されれぬ名優になった郭富城(アーロン・クォック)。さらには「亜洲影帝(アジアの映画王)」の名をほしいままにする周潤發(チョウ・ユンファ)、「ABC(American Born Chinese)」芸能人の何潤東(ピーター・ホー)、台湾の人気女優、陳喬恩(ジョー・チェン)、日本でもおなじみの陳慧琳(ケリー・チャン)、梁詠琪(ジジ・リョン)と、オールスターキャスト。旧正月映画の本領発揮である。
まあ、かかる状況においては、内容はともかく、それぞれのスターお目当てで映画館に押し掛けた人も多いだろうから、自ずと興行成績は上がるわな…。と、いう点を差し引いて観た方がいいのかもね…。

◆以下、ネタバレの可能性大いにアリ。気に入らない人はスルー願いたし!◆

【甘口評】
まず、「大いに楽しめた!」というのが、包み隠さぬ感想。なるほど、旧正月の「娯楽大作」である。って言うか、旧正月の作品はこうでなきゃいかんと思った。
もちろん、3D作品という大前提で制作されているから、2Dで観ると、その点では迫力を著しく欠くが、その分、ドニーが相変わらず総合格闘系の技を駆使したり、「アンタ、本当にドニー君かえ?」と疑いたくなるほどの特殊メイクで、猿の演技に真面目に(当たり前だがw)取り組んでいるのが愉快だし、古今東西「西遊記」史上空前絶後の超美形の牛魔王を演じるアーロンも見ものだし、観音さん役のケリーは母性の慈悲を醸し出すイイ女だし…と、なかなか見逃せない場面連続で、観客を退屈させることはない、サービス精神あふれる作品。

この作品を前にして、「原作では…」とか「ここまでデフォルメするのか」など、小難しい講釈を並べたてるのは、愚の骨頂。スパースター競演による娯楽大作を、理屈抜きに存分に楽しむべし。

【辛口評】
作品そのもにケチをつける隙らしき点はほとんど無かったが、エンドロールが長すぎる(笑)。本編が終わって、「THE END」の文字が現れるまで、延々10分弱はあったろうか。このキャストがそろってこれだけの娯楽大作を3Dで制作したのだから、当然携わったスタッフの数もとんでもない数なんだろうけど。これでは「あ~、おもしろかった」という余韻は、席を立つまでに吹っ飛んでしまう。香港人がエンドロールが始まると一斉に席を立つのを初めてみた時、「噂には聞いていたが、大概失礼な行為やな」と思ったが、ことこの作品については、知り合いの名前を探すならいざ知らず、そうでもない限りは、さっさと席を立った方が、よろしかろう。

「まだ続きはアルヨ」的な終わり方をしたので、当然、続編はある。『西遊記之三打白骨精』が今年2月にクランク・イン。今回、古今東西「西遊記」史上空前絶後の超美形の牛魔王を演じたアーロンが次は孫悟空を演じるとか。こちらは来年の旧正月娯楽大作として、また大ヒットの予感。

《西遊記之大鬧天宮》香港預告片

(平成27年5月29日 シネマート心斎橋)


1件のコメント

コメントを残す