そしてまた、アナタの知らないマカオ
『ビフォー・ドーン・クラック』
(濠題=夜了又破曉)
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
5月30日に開幕して以来、好評を博している世界で初めての「マカオ映画祭」も、この日を入れてあと2日となった。
今日、鑑賞したのは「マカオ・インディ映画の父」と言われた許國明(ヴィンセント・ホイ)監督の二作目『ビフォー・ドーン・クラック』。2007年制作のちょっとだけ前の作品になるが、カジノを抱える街、マカオの「ある夜の出来事」が描かれている。
濠題 『夜了又破曉』
英題 『Before Dawn Cracks』
邦題 『ビフォー・ドーン・クラック』
製作年 2007年
製作地 マカオ
言語 広東語
評価 ★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督):許國明(ヴィンセント・ホイ)
領銜主演(出演):曾韋迪(ディッキー・ツァン)、陳羨玲(チェン・シエンリン)、鄭秀歡(エリーザ・チェン)、陳兆銘
いつもの劇評なら「ネタバレ御免…」と断りを入れるんだけど、この作品は当面は日本では上映されないと思うので、あれやこれや思うままに…。
当然ながら、知らない俳優さんばっかりでして(笑)。
終演後、映画祭主宰者のリム・カーワイ監督による解説の中で話があったが、マカオ映画の現状から容易に察せられるように、映画だけでメシ食ってる俳優さんはまず居なくって、本作品のキャストも多くは「舞台俳優」だという。あ、なるほど…、という演技も後で言われて、思い当る節は無きにしも非ずだけど、鑑賞中はまったく気にはならなっかたなあ。後付けの、そういえばの話だが、「もうちょっとカメラ目線があってもいいのに」と言いたくなる場面もあったかもね、特に主役の「阿博(アボー)」を演じた俳優さん…。
そんな中で、阿博が殺害を何度も試みながら、結局果たせなかった的士士機(タクシードライバー)の円熟味のある演技が印象深い。香港のテレビドラマを見ているような安心感があった。あの人は、いい意味で小慣れており相当達者な俳優だとみた。
カジノを抱える街、マカオならではの人間ドラマが物語の中心になっており、マカオの街の風景やクラシックな建物を期待する向きには、とてつもなく物足りない内容。総体的には散漫なストーリー立てという印象。もっとも、村上春樹の『アフター・ダーク』から着想を得たというから、アタシには向かなかったのかも(いや、理解できなかった<笑>)。
これも終演後の解説で聞けた裏話だけど、かなりの低予算(額を聞いて、「え!そんなんで映画撮れるんですか!」というくらい)で、スタッフの数もギリギリの線まで限られた中での撮影だったと。ホイ監督自身もその辺は充分すぎるくらい痛感しているらしく、改めて見てみると反省点が多かったとのこと。
ホイ監督自身長編三作目となる作品は、マカオ政府文化局の助成金の獲得をアプライしており、申請が通れば、本作の反省点をじゅうぶん踏まえたものが陽の目を見ることになるはず。期待しよう。
ストーリーは、カジノで散財してしまった阿博が、高利貸しに最もリスキーなプランで借金。これも瞬く間に使い果たし…。そこから始まる不思議な一夜の物語を、阿博の母親、友人、彼女の物語をリンクさせながら進めて行く。
さっき「散漫な」と言ったのは、このへんの「つなぎ」や「関連性」が非常に甘く感じたからだと思う。正直なところ120分は長過ぎた。うまくやれば90分には収まったんじゃないだろうか? 多分、ホイ監督自身は先述の通りの低予算と少ないスタッフという制作条件下で、きっと忸怩たる思いで世に送り出したんだろうなと感じる。
大阪の一部政治勢力はカジノ誘致に積極的だが、その暁には、大阪の街にもこんな物語が出現するのかな…。そう思うと、怖い話ではあった。
澳門電影<夜了又破曉>預告片 =マカオ映画「ビフォー・ドーン・クラック」予告編
(平成26年6月5日 プラネット・プラス・ワンにて鑑賞)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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