新・アナタの知らないマカオ
『マカオの恋の物語』
(濠題=堂口故事2 愛情在城)
いきなりマカオづいちゃってる拙ブログ。「アナタの知らないマカオ」も、初回に始まり、「続」、「新」ときた(笑)。これじゃまるで『男たちの挽歌』シリーズじゃないか(笑)。ま、世の中そんなもんである。
今回は、デモの続報ではなくって、大阪で開催されている、世界で最初の「マカオ映画祭」に関して。
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
ツウ好みの渋いラインナップを上映する「第七藝術劇場」において5月30日、幕を開けた「マカオ映画祭」は、31日からは場所をこれまた、めっさ渋い、あまりにも渋すぎる上映館「プラネット・プラス・ワン」に移して、マカオからの多彩なゲストによるトークショーやシンポジウムを交えながら、6月6日まで開催される。
この映画祭の主宰者は、大阪を拠点としながらも、広くアジア各地で活動する異色の映画人、リム・カーワイ氏。最近では、監督・脚本・編集・プロデューサーとして、大阪、香港などを舞台にした『Fly Me To Minami 〜恋するミナミ〜』がスマッシュヒットさせたことで、その名前に見覚えのある人もいるんじゃないかな。映画監督というと、非常に難しくって扱いにくいという印象が強いけど、リム監督とちょっとだけ会話したところ、めっちゃ気さくなにーちゃんだったのである(笑)。
さて、5月最終日のこの日の大阪は30度を余裕で超える盛夏の気候。そんな中を「急げ!プラネット・プラス・ワン」へ…。
とにかくちっちゃな映画館なのよ。それはもう、配給会社の大阪支社の試写室のような…。50人も入れるかな? そんな感じ。それでも熱気ムンムンの館内。満員御礼の入り。リム監督はもちろん、この日の上映作品『マカオの恋の物語』のプロデューサー、朱佑人(アルバート・チュウ)氏が出迎えてくれるのが嬉しい。
<一部ネタバレ御免!(勘弁してほしい人はスルー願いたし!)>
濠題 『堂口故事2 愛情在城』
英題 『Macau Stories 2 – LOVE IN THE CITY』
邦題 『マカオの恋の物語』
製作年 2011年
製作地 マカオ
言語 広東語
評価 ★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督):鄭君熾(ジョーダン・チェン)、フェルナルド・イーロイ、歐陽永鋒(アウヨン・ウェンフォン)、杜健康(トー・キンホン)、黎若嵐(エリザベス・ラレア)、黃婷婷(ハリエット・ウォン)
領銜主演(出演):小肥、朱蕾安、張栢菱、梁子麟、葉崇茵、黃思傑、蔡贇、丁倩玉、何汝霆、 Daniela Guerreiro、梁梓豪、陳詩慧
特別演出(特別出演):SOLER
さすがに「元・香港人」の小生でも、知っているのは特別出演の男性デュエット「SOLER」(ソラって言ったと思う)のみ。SOLERにしたって、並みの在住日本人で知ってる人は、ごくわずかだと思う。そんな面々がどんなストーリーを展開してくれるのか。
監督6人で撮った、6つの恋のエピソードを綴ったオムニバス映画。で、ソラが各物語のつなぎの場面を埋めながら全体を通しての、言うなれば狂言回し的な役割。
【甘口評】、【辛口評】は今回はやめとくわ。とにかく、マカオ映画を海外で観てもらおうという、マカオ映画人とそれをプロデュースしたリム監督ならびにプラネット・プラス・ワンに敬意を表する意味でも…。
代わりに思う所をいくつか。
エピソード1「百年孤寂」
中学生、思春期の女の子および男の子の恋心を、図書館の一冊の本を軸に描いている。女の子の気持ちをわかるにはちょっとつらいけど、男子の気持ち、恋心は見ていて可愛らしかったなぁ…。ああいうもんよ…、うんうん、なんて思いながら…。
エピソード2「June」
マカオっぽい風情。仕立屋の女性と、海外からマカオへ戻った青年のストーリー。これは画面からはマカオの匂いが沸き立っているけど、タッチとしては香港映画に通じるモノがあったかもな。
エピソード3「Sofa」
コミカルな主演男女の掛け合いが楽しい物語。アパートの屋上に置かれた唇を彷彿とさせる赤いソファーにまつわる、あれやこれやの顛末。ボーイフレンド役の小肥の演技が味わいがあって気に入った。
エピソード4「蛋糕」
大陸から出稼ぎにきた男性。「卵アレルギー」と言いながら、ケーキを口にする日々。密かに恋心を抱くベトナムからの出稼ぎ女性が、ケーキが好きだから…? そしてこの男、ついに!…。
エピソード5「觸電」
屋上シート張りの「家」に住む青年のもとに現れた、謎の女性。これは恋なのか?と思ってずっと観ていたら…。二人は物語の中で会話はしていなかったので、どんな声かもわからなかったんだが、ラストシーンでの青年の行動で、「恋なのか?」の答えがわかるような…。
エピソード6「冰凍的世界」
幼い男女の「ラブストーリー」。小学生なのにねぇと、おっさんは思いながらも、多分間違いなく自分にもそういう時代はあったんだろう。「我不會死!(ボクは死にましぇ~ん!)」と、真っ白なランニングにマジックで書いた後に、少年は…。
いずれも、「その次のシーン」をお客の想像にお任せというスタイル。ここは観客の想像力次第でいろんな物語が展開されるという面白さがある。だからと言って、「続編が是非見たい!」ってほどの重厚さもなく、軽いタッチなのがいいのかも。全体を通して肩の凝らない作風。タイトルの通りに「マカオの空の下、こんなお話が…」みたいな。
総体的には、90年代香港映画の「ニューウェーブ」のブームにあった『晩9朝5』、『播種情人』あたりに通じるものを感じた。まだまだ作りが荒いのは否めないけど。
上映終了後、リム監督と朱プロデューサーによるトークタイムに。客席からの質問に朱さんが答えるわけだけど、通訳はリム監督。そう、彼は日本語も広東語も堪能なマレー出身者なのである。
興味深い話がいくつかあったわけだけど、いつものことながらメモなんてしていないわけで、ほとんど忘れちゃった(笑)。で、なんとか記憶している話としては…。
1)この映画は「堂口故事2」とあるように、「1」も存在する。「1」ではマカオの街そのものを映画にした。続いて、「3」も制作し、マカオにおいて「近日公開」である。
2)2002年、マカオではカジノの経営権の国際入札を始めた。これにより香港系、ラスベガス系など海外のカジノが一気に進出し、瞬く間にラスベガスと肩を並べるカジノの街になったのだが、一般市民は実はこの繁栄をあまり快くは思っていないという。マカオ本来の良さが外に伝わっていないとの危惧。
3)そこでマカオ政府もそんな危惧を打ち消すべく、クリエイティブ分野への投資を積極的に行う。本作品も政府の補助を受けている。
そもそもが、マカオの映画制作環境はよくない。それはマカオの作品が皆無に等しいことからもわかるし、映画というフィールドで見れば、マカオも香港の「一部地域」にすぎないという現状は、今も昔も変わりはない。それでもこうしてマカオ人の力で、マカオを題材として、マカオの街で作り上げる映画もあるということが、今回の「マカオ映画祭」によって日本で認識してもらえるきっかけになればいいね…。
あ、そうそう。そもそもなんで「堂口」なんだろう? これ質問すればよかった。「堂口」って、やくざとかの「組織」っていう意味なんよな。
(平成26年5月31日 プラネット・プラス・ワンにて鑑賞)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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