【けいおん部】私家版・青春プレイバック<2>

前回のアップの文章が、読み返してみると、どうも新聞の論評みたいに堅苦しくって、全然面白みがなかったのを反省し、今回は柔らかくやってみようと思ってますが、さてさて果たしていかがな感じになるでしょうか…。

41XrLt4puOL『SUMMER HOLIDAY』  須藤薫
昭和59年6月発売(CBSソニー)

■今年の3月3日、58歳の若さで世を去った「永遠の歌姫」本人が制作に参加した、唯一のベスト盤。デビューから5年間の須藤薫の軌跡を披歴していると同時に、現在に至ってもなお、根強い人気を保ち続けるアルバムであって、機嫌のよい日曜日や海辺のドライブに、非常に良く似合う名曲がズラリと並ぶ。

■高校生の時、なかなか耳ざわりのよいポップな歌声がFMで流れているな~と思ったら、それが須藤薫だった。以来、財務的に困窮している高校生故、レンタルしたり、エアチェック(懐かしい響き!)したりして、自分なりに「須藤薫ベスト」のオリジナルカセットテープをいくつもいくつも作った。「大学生になったら、こいつらをカーステ(これまた懐かしい響き!)でガンガン鳴らして、それこそ『恋のビーチ・ドライバー』になるねん、俺!」なんて思っていたものだ。—–お前は、カーステでお気に入りの音楽流すために大学生になったのか?(爆!)。

■そんな折も折、免許が取れた昭和59年の6月、まさしく『あなただけI LOVE YOU』と言ってくれてるかのようなベストタイミングで、このアルバムがリリースされたんだから、こんな素晴らしいプレゼントはなかったな~。そりゃもう、即買いですョ!

■前回の『かぐや姫フォーエバー』でも触れたけど、LP時代のアルバムは、「物語」を紡いでいたと。このアルバムも、ベスト盤でありながら、ひとつの「物語」がそこにあった。

■従来のA面、B面を「SUNNY SIDE」と「SENTIMENTAL SIDE」と呼び、「SUNNY SIDE」は当然ながら、「さあ~、これから遊びに行こう!」という雰囲気に満ち溢れた曲が並び、「SENTIMENTAL SIDE」には、ビーチで思いっきり遊んだ後に、車が都会の街並みに入って行くような、ちょっと切ない気持の曲がラインナップされていて、遊び好きだった当時のヤング(これも懐かしい!)の気持ちをグッとつかんでいた。

■そんなわけで、このアルバムをはじめ、須藤薫のレコードは、大学前のレンタルレコードショップにおいて、山下達郎や大瀧詠一、ユーミンなどのレンタル上位ランクの常連組と肩を並べる人気だったのだ。心中密かに「俺、高校生の時から聴いてるもんね~」なんて優越感を持っていたバカたれです、アタクシは(笑)。

■おすすめは、「SUNNY SIDE」の『FOOLISH(渚のポストマン)』から『恋のビーチ・ドライバー』と、「SENTIMENTAL SIDE」の『セカンド・ラブ』と『いつかこの都会で』。ジャケットのデザインも、真夏のドライブへと心をかきたてるお洒落なものになっていて、手に取ると、いつまでも高校生から大学生の自分に戻れる、貴重かつ愛おしい1枚。

【収録曲】<SUNNY SIDE>REMEMBER/素敵なステディ/FOOLISH(渚のポストマン)/恋のビーチ・ドライバー/LOVE AGAIN/恋の最終列車 <SENTIMENTAL SIDE>RAINY DAY HELLO/セカンド・ラブ/THE BLACK HOLE/いつかこの都会で/悲しき恋のマンディ/裸足のままで
 

61XvlcnvNeL『WINTER WONDERLAND』 伊藤銀次
昭和58年10月発売(ポリスター)

■伊藤銀次と言えば、『笑っていいとも!』のOP曲『ウキウキWatching 』の作曲者である。クレジットで名前を見たことがあるでしょ?え?ないの?マジで? まあ、それは置いておくとして。

■日比野克彦によるクラフトワークをあしらった愉快なジャケットに加え、レコード盤は半透明のオレンジ色という、手にするだけでワクワクするアルバム。当時、「シュガー・ポップ」と呼ばれた、良質なサウンドをここに至る前3作同様に踏襲しているが、絶大な支持を受けたその路線も、ここで一区切りをつけようかということか、ジャケットにはファンへの謝意をこめて「I THANK YOU」の文字も見える。「シュガーポップ」か、何とも言えない、青春の甘い響きがするね…。

■先に紹介した須藤薫の『SUMMER HOLIDAY』が、思いっきり「夏」しているのとは正反対に、こちらは思いっきり「冬」のラインナップ。10月発売ということで、間近に迫ったスキーシーズン、あるいはクリスマスパーティーを意識する曲がズラリと並び、やっぱり遊びたい盛りの20歳の小生を一瞬にして虜にしてしまった1枚。

■すでに前3作『BABY BLUE』(S.57)、『SUGAR BOY BLUES』(S.57)、『STARDUST SYNPHONEY `65-`83』(S.58)で、「伊藤銀次ええやん!」ってすっかり魅せられていたもんだから、このアルバムも迷わず発売日に入手したわけだが、あまりにもの出来の良さに感激しまくったものである。前述のようにウインターシーズンを前にして、「さあ、夏に続いて冬も遊びまくるで!」という意気込みをしっかり後押ししてくれるような曲の数々は、今もiPhoneに入れて持ち歩いているというほどのお気に入りである。

■で、「シュガー・ポップ」路線に一区切りつけたこのアルバム以降、小生もまた伊藤銀次に一区切りをつけてしまった。次のアルバムも買うことは買ったけど、まったくしっくり来なくて、すっかり疎遠になってしまった。

■今は、CDなどのデジタル音源で聴いているけど、このレコードに針を落とせば、♪きっと来るかな みんな 来るかな 楽しい今夜は眠らない…と、『パーティー・トーク』の始まりを予感させてくれる、楽しい楽しい1枚であることには、変わりはない。

■おすすめは、SIDE-Ⅰの『あの娘のビッグ・ウェンズデー』、『白い恋人たち』、SIDE-Ⅱでは『誰のものでもないBABY』、『フェアウェル・ブルー・クリスマス』かな。

■暑い暑い夏を乗り越えれば、このアルバムが恋しい季節が、すぐやってくる。

【収録曲】<SIDE-Ⅰ>パーティー・トーク/パリッシュブルーの朝に/あの娘のビッグ・ウェンズデー/白い恋人たち/雪は空から降ってくる <SIDE-Ⅱ>Skylightにポプラの枯葉/誰のものでもないBABY/47丁目の恋人/僕と彼女のショート・ストーリー/フェアウェル・ブルー・クリスマス

さてさて。一応、「ベスト5」を並べてみる、なんて言ったので、残りはあと1枚となったわけですが、その1枚、悩んでます。さあ、最後の1枚には何になるでしょうか? 楽しみな方も楽しくない方も、次回をお楽しみに(笑)。


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