美術愛好家かと言えば、そういうわけではなく、では、興味ないかと言われると、そういうわけでもなく。
たとえば、台北の故宮博物院なんて、朝の10時から閉館ギリギリまで見学していても、一向に飽きないし、台北に行くたびに訪れている。
だからと言って、マニアでもない…。あ、単にヒマなのかも(笑)。
どっちにしろ、今回展示されているこれだけのモノを見れるなんて機会は、ボストン美術館へ行かない限り、今後、多分ないだろう…。ってことで、行ってきたのは大阪市立美術館で開催中の「特別展 ボストン美術館 日本美術の至宝」。
http://www.boston-nippon.jp/
ド平日ということで、スイスイ見物できるだろうと暢気に構えていたのだが、甘かった。すごい来館者の数。これは驚き。土日の混雑は想像したくないなぁ、ってほどの入り。
ボストン美術館に、なぜにこれほどまでの日本の美術品が収蔵されているかについては、明治の廃仏毀釈などいくつかの事情があるわけだが、小難しいことはさておき、いずれの展示物にも圧倒されるばかりであります。
お気に入りをいくつかご紹介。(どんなものかについては、ぜひ現場でお確かめを!)
弥勒菩薩像(快慶作)
12世紀の作であるということだが、内乱相次ぎ、人々が絶望感を強めていた世情を反映し、弥勒への信仰が集まった時代。非常にバランスのとれた肉体美に惚れ惚れする。なるほどね、これは救いを求めたくなるご尊顔であり、お身体であ ります。この時代に至ってなお、金色に輝くお姿、開眼当時はさらなる輝きで、衆生をお救いになったのでありましょう。
吉備大臣入唐絵巻
今回の特別展の目玉の一つである。日本史教科書でおなじみの吉備真備が、遣唐使として渡るも、様々な無理難題を突き付けられつつ、持ち前の「超能力」で乗り越えて行くというストーリーが描かれている。1巻~4巻まで揃うと、これは 圧巻。そしてストーリーの奇想天外具合と言ったら、ありゃしない。「空飛ぶ吉備真備」あるいは「瞬間移動の吉備真備」、こういう自由な発想を平安時代の日本人が持ち合わせていたことが、愉快でならない。現在のアニメの出発点を見る思いであります。
平治物語絵巻 三条殿夜討巻
こちらは鎌倉時代の作品。さすがに「日本絵画史上、最も迫力ある合戦絵巻」と 言われるだけあって、『吉備大臣入唐絵巻』とは打って変わって、夜討の現場の激しさが伝わってまいります。燃え盛る炎から逃れんとして、井戸には累々たる人々…。劇画タッチとで言いますかね。現代で言うなら「戦場グラフ特集」みたいなものなのでしょうけど、ある意味、写真以上に絵が物語を伝えています。いや~、すごいな~。
韃靼人狩猟図(伝狩野元信筆)
「韃靼」っていう響きにあこがれるんですよね。「タタール系民族」なんて呼び方より、はるかに異国を感じさせてくれる響き、と思いませんか?その韃靼人が狩猟をしている場面なんですが、躍動感と壮大感があって、ひきつけられました。
韃靼人朝貢図絵屏風(伝狩野永徳筆)
これも韃靼人を描いています。騎馬の様子が、『~狩猟図』よりもリアルさが増しているというか、単に対象が大きいからわかりやすいからなのか…。そのへんはわかりませんけど。元信、永徳には「韃靼」への憧憬があったのかな…。
雲竜図(曽我蕭白筆)
今回の最大の目玉であります。ハイビジョン画面もびっくりの大迫力のパノラマには圧倒されるばかり。とにかく現地で見てください!こればかりは、どんな言葉を尽くしても表現するのは難しいですから(と、逃げておくw)。
正面ロビーには、こんなのもあって記念撮影する人、多し
展示物のほとんどが国宝、重文クラスなのは言うまでもありませんが、ボストンにあるから、国宝でも重文でもありません。
ただ、「人類共通の文化財」として、ボストン美術館が永久的に保存してくれるなら、そういう運命もよかろうと思った次第。
久々に美術館へ訪れる機会をくれた、日本の至宝の数々に感謝!
(平成25年5月30日鑑賞 展示は6月16日まで)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。