10年前のSARS禍の回顧も8回目(いつ終わるねんw)。
4月初旬、当時の勤務先の最大と言ってよいほどのお取引先であった某ローカル旅行会社社長から、直々に呼び出しがありました。
あのような時節でしたので、売上大幅ダウン、最悪の場合は全滅、の腹は括っていました。
「3月最終週と4月1週で、日本往復チケットだけで過去最高と言っていいほどの売上があったのだが…」
普通、お取引先というものは、自ら取引高を増やそうなどとはめったに口にしません。小生の業界では特にその傾向は強い。ましてや、あの状況。いくら売上が記録的な数字だったとしても、我々を呼び出したからには、まず、おいしい話でないのは間違いありませんよね。
「そのチケット、ほとんど全部が正規料金、すなわち1年オープンチケットだった」
SARSに危険を感じた在住邦人のうち、お子さんと主婦はほとんど帰国したわけです。
1年オープンチケットで帰国したと言うことは、1年以内のうちで、いつ戻って来るかわからないと言うこと。
「そんな時期だから、『ご旅行なら当社で』とかアピールする相手もいない」
とは、同社社長。実際、SARSの蔓延が始まってから、中国や東南アジアへの出張もキャンセルが相次ぎ、4月に入ってからは、ほとんど商売になっていないとお嘆き。結局、取引一旦停止は免れたものの、いつ何時、「最後通告」を受けてもおかしくない状況でした。
同社からの帰り道、観光客が香港でもっとも集中する九龍サイドの目抜き通り、ネーザンロードを歩いていました。この通りに面して、観光客相手の土産物店が軒を連ねています。とりわけ尖沙咀(Tsim Sha Tsui)エリアは、この手の店がひしめきあっていまして、インド人が経営するシルクショップや、かなりボッタクリ度の高いカメラ店などが目立ちます。
驚いたのは、これらの店が半額以下の「叩き売り」をしていたこと。いついかなる状況においても、この手の店は、かなり悪どい商売で観光客をカモにしていたわけですが、そいつらが「叩き売り」、それも「閉店につき在庫一掃!」をやっているのは、信じられない光景でした。
「ああ、香港も終わりか…」
そんなことも覚悟したりしなかったり…。
【4月3日】
■医管局・高永文署理行政総裁は、午後9時より公立病院救急センターの病室見舞いを全面禁止すると発表。患者との連絡は、病院内での携帯電話使用をある程度は許可する以外はダメ。
■教統局は、現在実施中の「全学校休校」措置について、期限の4月7日を前に「さらに2週間、あるいはそれ以上の休校措置延長」を発表する動きだと発言。
■教統局・李国章(アーサー・リー)局長は、午後3時半より記者会見を開き、学校の休校措置延長を発表。同局は3月29日より全香港の幼稚園、小・中学校、大学専科校を休校にしており、現在も継続中。大学などもこれに倣い休校になっている。現行の3月27日-4月7日までの休校措置期間をさらに延長、4月21日(イースター月曜祭)まで休みとすると決定。学校再開は22日。香港日本人学校もこれに合わせ予定変更。入学転入説明会は4月28日に延期、始業式4月29日、入学式4月30日。
■労工処・左陳翠玉助理処長は、SARS問題を踏まえ、労資双方が話し合い、妊婦には有給休暇ないし配置換えなどの手配をするようにしてほしいと呼びかけ。
■SARSに感染した個人開業医が死亡。SARS感染した医療関係者で初の死者。医師は尖沙咀で開業しており、2月20日に発症、マーガレット病院に入院していた。
■8大学(香港大学、中文大学、バプティスト大学、嶺南大学、城市大学、教育学院、理工大学、科技大学)は、現在施行している休校措置を一週間延長し、4月13日まで休校に。
■4月3日午後1時現在、新たに26名のSARS感染者を確認した。うち2名は医療関係者、2名が淘大花園の住民。ここまでで計734名。また56歳の男性(前述の尖沙咀の開業医)が死亡。死者は累計17名。退院者はきょう9名。計98名。85名がICUで治療中。
■教統局・李国章局長は、本日までに計30名の学生と学校職員がSARSに感染していることを確認したと発表。
■TVB 22:50のニュースより:淘大花園の集団感染原因を調査中であるが、現場付近の工事現場も感染源の可能性がある。患者の尿からもウイルス検出。付近の工事現場の作業員が小便を地面に流した場合、その砂が風に舞って淘大花園を襲ったという線も捨てきれない。
【4月4日】
■台湾の衛生当局は、3月31日に中華航空CI652便(香港→台北)の乗客の中に1名のSARS可能性患者がいたことを発表。同便の搭乗客に、すみやかに台湾の疾病管制局へ連絡するよう呼びかけている。この機体は台北中正国際空港で消毒され、11名の乗務員は既に隔離されている。この便には131名の搭乗客がおり、大多数は台湾人。うち72名は中正国際空港でトランジットし、他国へ向かっている。
■ 新たに27人が公立病院に入院。うち5人は医療関係者。8人は淘大花園の住人。それ以外は新規患者および患者と接触した人。1人が退院し、退院者は計99人。ICUで治療を受けている患者数は103。亡くなった方17人。ほとんどの患者は新規治療法に好ましい反応を見せている。
■マカオ政府は、SARS感染の香港人1名が発症前にマカオに来ていたことを確認。この人と接触したマカオ人7人に10日間自宅隔離させる命令を出した。
■衛生署は、淘大花園ブロックE封鎖前に同マンションから引越して行方のわからない113世帯の追跡調査を警察に協力要請。警察では、既に55世帯と連絡が取れているが、残りの58世帯は未だに行方知れず。政府はこの人々に早く連絡をと呼びかけ。また、SARS患者と密接な接触があったとされる人のうち5名が衛生署指定の診療所に出頭していない。警察と衛生署はこの人々を探しており、もしもこれらの人が他者にSARSを伝染しうると考えられる場合、最低限の武力行使をもって病院へ強制収容することになる。
■衛生署は、行方不明で連絡の取れない淘大花園ブロックEの住民に、必ず4月10日17:00までに衛生署に連絡し、室内消毒のため門を開けるよう呼びかけている。さもなくば、衛生署は「防止傳染病蔓延規例」にのっとり、扉を強制的に開けて消毒することになる。同署スポークスマンによれば、SARS蔓延防止のため、ブロックE全体を消毒する必要があるとのこと。
■SARSの影響で、1万6千人が参加してカナダで開催される予定だった「国際がんフォーラム」が中止となった。米国がん研究協会は現在、トロントで蔓延しているSARSの状況に鑑み、当地で5日間行われる予定だったフォーラムの中止を宣言。
■TVB 深夜ニュースより:ユナイテッド・クリスチャン病院では医療スタッフのSARS感染が15名に。すでに5つの病室をSARS患者にあてており、加えて職員が倒れてゆくので医療業務に大きく影響が出ている。
■平等機会委員会は、今日まででのべ105件のSARSに関する問い合わせを受けた。その中には、ある葬儀社がSARSで亡くなった人の葬式請け負いを拒否したというものもあった。
【4月5日】
■RTHK(香港電台)の公開時事討論番組「政党論壇」で、多くの政党代表は「政府当局は、SARS感染者の住所や地区等、プライバシー侵害にならない範囲の情報公開をすべきだ」と述べた。付近住民の予防措置のため。また、海外旅行をする香港居民の健康証明書を発行するなどして、外国政府に信頼を持たせる措置も提案。このほか、中国内地との情報交換システムを拡張し、香港内の公共衛生監視を珠江デルタ地帯一体にまで広げ、外国投資家へ安心感を与えるべきだと主張。
■航空機欠航相次ぎ、今日は116便が欠航。香港線全体の20%にあたる。香港空港管理局は、イラク戦争とSARSの影響で、今月1カ月の便数は最低でも14%減ることになるだろうと予測している。
■SARSの影響で、香港発着便を減らす航空会社が続出。米コンチネンタル航空は5日、ニューヨーク-香港線(週5便)を13日から5月末まで運休すると発表した。キャセイパシフィック航空は4日、当分の間、総便数の約23%にあたる週108便を休止すると発表した。東京線も1週間あたり14便運休。中国便を中心に運航しているドラゴン航空も2日、アモイや南京、高雄線など週あたり42~56便を当分減便すると発表。
■全日空はすでに1日2便の成田-香港線1便に減らすことを決め、シンガポール航空はシンガポール-香港便を週あたり41便から26便に減らす。中国南方航空、タイ航空、マレーシア航空、大韓航空なども香港線の減便を決めている。
■医管局は、あす(6日)午前9時より、ウェールズ病院の救急センター業務を完全復旧すると発表。
■5日付英字紙「サウスチャイナモーニンポスト」は、香港中文大の医師の談話として、SARSと確認された妊婦が、投薬により胎児に奇形を起こす可能性があると懸念、妊娠中絶に同意したと伝えた。この妊婦の職業は看護師で、妊娠12週以内。現在集中治療を受けており、新型肺炎に有効とされる合成抗ウイルス薬「リバビリン」の投与が必要だが、この薬は人の細胞を傷つけ、胎児に奇形を起こす可能性があるため、妊婦が中絶に同意したという。妊婦は、感染が医療関係者に流行したウェールズ病院に勤務、感染が確認された後、妊娠が分かった。香港政府当局によると、この看護師以外に少なくとも妊婦2人が感染していることが分かっているという。
■大埔(Tai Po)のナダソール病院と観塘(Kwun Tong)のユナイテッド・クリスチャン病院の職員がSARSの疑いにより、衛生署では両院を訪れた人は、至急衛生署のホットラインまで連絡してほしいと呼びかけた。
■4月5日午後3時の時点で、香港では39名が新たにSARS感染。うち10名が医療スタッフ、7名が淘大花園住民。今日8名退院。107がICUで治療中。3名死亡。感染者合計800名。
■上海衛生当局は、当地で初のSARS感染者を確認。この女性は華南地方に出張したのち上海に戻り、SARS発症。現在隔離治療中で順調。
■今日までで、中国本土のSARS感染者は1220名、死者49名。過去2日で感染者は30名増加、死者3名増加。この66%は広東省。
■【華声報(中国僑網)】中国疾病抑制センター・李立明主任曰く、「SARSの病原体の分離に成功した。これはある種のクラミジア的性質を持つ粒体だ。2月18日に電子顕微鏡によって発見した。世界で最初だ!」と。実験の結果、クラミジアとRNAウイルスなど、細胞質ゾル反応型の病原体が原因であろうと思われる。
■SARSの影響により、シンガポールは休校措置を明日まで実施しているが、当局は同地でのSARS問題がまだ解決をみていないので、学校の休校を延長する。中学校は4月14日から、小学校は16日から再開。
■マレーシアで初のSARS死者を確認。死亡者はJerantutの64歳の男性で、先月中国とシンガポールに旅行。
■台湾・中央通信は5日、福岡発台北経由香港行きのキャセイ航空機CX511便に3月28日、SARSに感染した疑いのある男性乗客がいたと報じた。SARSは機内で感染する例も報告されている。
【4月6日】
■ウェールズ病院は今日、業務を全面復旧。しかし、多くのスタッフが休みを取っている。立法会の医学界代表・労永楽議員は、医管局がいまの状況でのウェールズ病院を再開させたことは無理があるのではと疑問視。
■4月6日午後3時までで、新たに42名のSARS感染者を確認。うち9名が医療関係者、11名が淘大花園の住人。累計842名。今日の退院者は9名、累計116名。108名がICUで治療中。新たに2名死亡。71歳女性(マーガレット病院で)、68歳女性(ウェールズ病院で)。累計22名
■新界東地区病院網総責任者(ウェールズ病院長)の馮康氏がSARSに感染していることが確認された。目下ウェールズ病院で治療中。
■衛生署は、依然として淘大花園E座6世帯の行方がわからないと発表。
■中国衛生省は6日、国際労働機関(ILO)技能開発局のペッカ・アロ局長が同朝、SARSのため北京で死亡したことを明らかにした。SARSによる死亡が公表されたのは北京で4人目。衛生省国際協力局・劉培竜局長によると、アロ局長は北京での就職フォーラムの準備のため、ジュネーブからバンコクを経由し、3月23日に北京に着いた。新華社によると、5日までの4日間に、中国でのSARS感染者は57人増えて1247人に、死者は5人増えて51人に達している。
■院管局・梁智鴻局長がテレビに出演。今月末の時点で2000~3000人の患者に対応できると語り、万が一、さらに多くの市民が肺炎にかかっても、十分な治療が可能だと強調した。
■6日付「文匯報」は、北京の消息筋の話として、中国共産党宣伝部がこのほど、SARSの感染が報告されている省や自治区の主要メディアに対し、この問題の報道を許可する緊急通知を出したと報じた。これまでの報道管制を事実上認めるものだが、情報公開に今後は積極的に取り組む姿勢を示すことで、国際社会の批判をかわそうという狙い。通知は、「感染状況を客観的かつ公正に報じることで、知識の普及と対策の周知を図ることにつながる」と強調。
■カナダ・トロントでまたSARS患者が1名死亡。カナダでのSARSによる死者はこれで8人目。
■豪州衛生当局は、最近ベトナムから同国へ来た2歳の児童がSARSの疑いで入院したと発表。豪州ではこのほか4件のSARS可能性患者がいる。
■豪州政府は明日7日、新条例を発布予定。警察、衛生関連当局などに、SARS感染の疑いのある者の身柄を拘束する権限を与える。これに従わない者は懲役刑になる可能性がある。
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日本人学校の始業式や入学式が延期になったこともあり、在住邦人の子供と主婦の「疎開」は急速に進みます。最初にも書いたように、「終息するまでは日本に」ということです。この「疎開」によって、邦人子女対象の学習塾も多大な影響を被っていました。塾生がいない、ようするに月謝=収入がゼロなんですから…。
死活問題ですよね…。
色んな業界に、深刻な影響が一気に広がっていきました。
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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