落語
第17回月亭八天独演会 THE LAST HATTEN
いよいよ113年ぶりの名跡復活、「月亭文都」襲名を3月19日に控えた月亭八天師匠。大きな名跡とあって、上方落語界はもちろんのこと、吉本興業としても非常に力を入れている一大事業であります。
そして。八天としては最後となる独演会が1月19日、天満天神繁昌亭で開催されましたので、もちろん行ってきましたョ!
立ち見も出て立錐の余地もない「ぎっしり超満員」なんですが、アタシの横がずっと空いたままでした。後ろで立って見てるんなら、ここへ来て座ればええのに…。まあええけど。
いつものように「今のそのネタにモノ申す!」風体のコアなファンが多い八天師の会。こういうところにゲストで出る人は、きついんちゃうかなぁ? なんて心配してあげちゃいますが…。どうでしたか? 八光くん。
<ネタ帳>
「田楽喰い」 月亭天使
「つぼ算」 月亭八天
「堪忍袋」 月亭八光
「三十石夢の通路(上)」 八天
中入り
「三十石夢の通路(下)」 八天
ぎっしりのお客さんは皆、温かい。八天最後の独演会をしっかり見届けて、文都襲名を応援してやろう、そんな雰囲気の、良い感じの会でした。
まずは八天師の弟子・天使の「田楽喰い」から。ちょっとバタバタしてましたか?
続いて八天師「つぼ算」。マクラで襲名公演に向けてのあれこれ。まあ「大変でんな、それは」と言うは易し。身体だけは充分にお気を付け下さい、としか外野は声のかけようがありませぬ。
で、多分、八天師の「つぼ算」は初めて聴いたような…。安心と信頼の八天落語。アタシも計算の鈍い人間ですから、ご登場の皆さんを笑うことはできませんが(笑)。
八光くん登場。意地悪な人は「ちゃんと落語でけるんかいな?」と思ったかもしれませんが、「嫁ネタ」交えて、ちゃんとしたオーソドックスな「堪忍袋」で笑わせてくれます。
八天として最後の独演会にかけますトリネタは「三十石」。小生の好きなネタの一つです。
拙ブログでもたびたび申し上げておりますが、「落語は想像の芸能」でして、噺家がしゃべる物事を想像して「ぎゃはは」と笑うのが楽しいであります。そういう観点からすると、この「三十石」などは、淀川を上り下りしていた三十石船にまつわるあれやこれやに想像をめぐらし、笑うだけではなく、語られる時代の光景などを思い浮かべながら…という楽しさもあります。
そういう「歴史の語り部」みたいな部分も噺家には必要でして、その部分の勉強研究も、これまた噺家にとっては大変重要な仕事なのでしょう。今の時代、その部分を上手く伝えないと笑ってもらえないわけですから。
大変地味なことですから、こういうネタをやる人が減ってきます。これは「伝承の危機」であります。「古典落語」と簡単に言ってしまいがちですが、実は本当の意味での「古典落語」を出来る人、それほどの数ではないと思っています。
単なる「昔話」ではあきません。その光景をきちんとお客に想像してもらえる技量、要するに日ごろの研究の積み重ねのある噺家さんこそが「古典の出来る人」なんだと思っています。
そういう意味では、「古典の出来る人」である八天師の責務は重大です。文都襲名でますますその責務は大きくなると思うし、ぜひともそういう存在であってほしいと思っています。
そんなことを思わせる「三十石」でした。
3月19日、NGKでの襲名披露、小生も早々にチケットをおさえ、こちらも襲名に向けて準備万端(笑)。
でも…。もう1回か2回は「八天」を見に行きます(笑)。
(平成25年1月19日 天満天神繁昌亭)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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