【上方芸能な日々 文楽】仮名手本忠臣蔵~その2*旧ブログ

人形浄瑠璃文楽
平成二十四年十一月公演
通し狂言 仮名手本忠臣蔵 <第一部>

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過去の文楽公演パンフを引っ張り出してみれば、『仮名手本忠臣蔵』を前回見たのは遡ること、なんと平成6年の11月公演でした!

その翌年には、小生は約15年の香港生活を始めるわけです…。もちろん、その間にも折あれば文楽劇場へは行ってましたが、あくまで、一時帰国と日程が合えばということが大前提。そして、残念ながらそれ以降の忠臣蔵公演とは日程が合わず、今回、18年ぶりに『仮名手本忠臣蔵』の鑑賞となったわけです。

18年前の三業のメンバーを見ると、これはもう、言うまでもなく隔世の感があります。故人を偲ぶ意味で言いますが、「まことに結構な顔ぶれでございます」。

さて、当節今般の『仮名手本忠臣蔵』にまいりましょう。

最初に断っときますが、これ、あくまで小生の感ずるところですから。それも幕間にメモ書きしたものをある程度読みやすくここにアップしている、というものです。専門家やメディアの劇評とは180度違うかもわかりません。まさしく「二流見物人」の「感想文」ですョ。

■初演 寛延元年(1748)8月 大坂竹本座
■作者 竹田出雲、三好松洛、並木千柳 合作
■実際の事件(元禄赤穂事件)が題材。各方面への配慮から事件を『太平記』の世界に移し、大石内蔵助→大星由良助、浅野内匠頭→塩谷判官、吉良上野介→高師直などと登場人物を置き替え。

 

大序
「鶴が岡兜改めの段」
太夫、三味線は御簾内(みすうち)、床に出ない。人形主遣いも頭巾。
この大序、若手修練の場ということでもあるが、重厚な物語の発端である。やや丁寧さが欠けていたと感じる…。改善望むところ。

「恋歌の段」
顔世の南都大夫、感じがよかった。ちょっとお気に入り太夫になったかも。清丈`の三味線が、ここのところ安定感あり。
人形は判官の紋壽師匠休演で清五郎代役。病気の人を無理に引っ張り出すわけにはいかないけど、紋壽師匠で判官を見たかったのが正直なところ。

二段目
「桃井館本蔵松切の段」

文字久はんがよく奮闘。このところ辛口評価ばかりしてたけど、ごめんなさいねぇ。
人形は、幸助が遣う若狭助の短慮ぶりの印象がよかった。

三段目
「下馬先進物の段」

ここから、忠臣蔵唯一の「チャラ男」鷺坂伴内登場。とても好きなキャラなので、注目してしまいますね、どうしても。
その伴内、勘壽はんの動き具合は可もなく不可もなく。睦はちょっと抑え気味だったかな?

「腰元おかる文使いの段」
おかる、勘平登場。おかる&勘平の切ない物語が始まる。勘平遣う清十郎はんは、普段はお姫さん遣うことが多く、ひたすら美しい印象がインプットされているが、こういう役どころも良い。

「殿中刃傷の段」
一気に物語に緊張感そして緊迫感。津駒はんが緊張感あふれる語り聴かせるも、その上をゆく寛治師匠の三味線が太夫、人形陣、劇場全体をリード。感服。津駒の師直の憎さぶり良い。この段は師直が全てかもしれないなぁ。玉也はんもよかった。津駒の「ム~、ム~、ハッハ~…」の憎さ百倍の高笑いに場内圧倒され大喝采。

「裏門」
チャラ男・伴内の「うぬが主人の塩谷判官、おらが旦那の師直様と何と何か知らぬが…」、もうちょいリズム感あってもいいかもよ…、咲甫くん…。「伴内マニア(笑)」としては、あれこれ注文出てしまう(笑)。で、この伴内、今回は第2部で、場内の拍手を浴びるようなけっこういい仕事する(笑)。

四段目
「花籠の段」
英大夫、人物の語り分け、聴きやすい。特に、この段の中核、原郷右衛門と斧九太夫の語り分け。

「塩谷判官切腹の段」
咲さんの独壇場。燕三の三味線も緊張感ある弾きよう。静寂と緊張、忠臣蔵のクライマックスに客席、息を呑み、目は人形に耳は浄瑠璃に集中。「力弥々々」「ハツハツ」「由良助は」「いまだ参上仕りませぬ」…。なるほど、「切場」とはかくあるべきか。

「城明渡しの段」
もし「お前、今日1回だけ太夫させたるわ」と言われれば、ここ!「『はつた』と睨んで」。この一言だけを語らせてほしい。
18年前の由良助は玉男師匠。此度は玉女はん。やっぱり玉男師匠の由良助はいまだ脳裏から離れない。いや、玉女さんが良くないという意味ではない、それほどに玉男師匠のあそこでの由良助は凄かったということです。あれを見られた小生は、幸せ者だと思う…。

五段目
「山崎街道出合いの段」
相子、團吾ともに平坦。さりとて「こりゃアカン」ということもなし。

「二つ玉の段」
團七師匠の三味線良い。松香はん、緊迫感もう少し欲しかったかも…。その分、勘平の清十郎が心情を見せてくれていたような…。

六段目
「身売りの段」
呂勢、奮闘。もちろん、清治師匠が三味線でぐいぐい引っ張ったのもあるけど、よく聴かせてもらえたと思う。勘平の苦悩ぶり、清十郎よい。

「早野勘平腹切の段」
前日は体調不良で休演の源大夫、この日もしんどそう。途中で下がり、津駒と交代。「しんどいなら、無理せんと休みはったらええのに」と、隣席のご婦人方が言ってたが…。
藤蔵の三味線は、冴えわたる。が、鋭さと共に、包み込むような音色も欲しい…とは、欲を出し過ぎでしょうか、あたくし?
やはり、ここでも清十郎の勘平、印象深い。
客入りは9割以上、ほぼ満員。さすが、忠臣蔵。

腰に爆弾あるので、これ以上座るのはきついということもあり、第2部は翌々日にしましたが、やはりこれは、「通し」で丸一日かけて見なけりゃいかんな、と思った次第。


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