11月18日、恒例の「山本能楽堂」での「吉坊ノ会」二日目に行ってまいりました。
奇しくもこの日は、吉坊くんの師匠・吉朝さんの誕生日。こういう特別な日に自分の会を開くことができ、ネタ卸しとなる「浮かれの屑より」を披露できたこと、感慨深いものがあるんじゃないですかね。
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
吉坊ノ会
2011年11月18日
山本能楽堂
<ネタ帳>
1.桃太郎……桂福丸
2.稲荷俥……桂吉の丞
3.どうらんの幸助……桂吉坊
仲入り
4.三十石……林家染丸
5.浮かれの屑より……吉坊
前告知にもプログラムにも無かった福丸くん、前座で「桃太郎」。京大法学部卒の異色の噺家。キャリアは浅いですが、師匠の福團治さんの指導も行き届いてるのでしょう、春團治一門らしい端正な落語をやるなあ。所作がきれい。
吉坊くんの弟弟子の吉の丞くん。順調に力をつけている若手の一人。「稲荷俥」は、過去に米朝師匠で聴いた覚えがあります。米朝師匠が復活させたネタなんでしょうかね?そういうことなら、一門の吉の丞くんがこうして継承してゆけるなら、これは大変結構なことかと。
さて、吉坊くんこの日最初のネタは「どうらんの幸助」です。かつては「胴乱の幸助」と記されていましたが、近頃は「どうらん」と仮名で開くことが多いですね。
ネタは浄瑠璃の「桂川連理柵」(かつらがわれんりのしがらみ)お半長右衛門帯屋の段の嫁いじめの話が背景にあって、そんなのを知ってて笑えたりもするんですが、それはこのネタが成立した当時のことであり、今では逆に落語を聴いて「お半長」のことを知る人も多いでしょう。それで文楽で「お半長」がかかったときに、「あ、どうらんの幸助か!」と思い出して興味を持つのもいいんじゃないっすか。
吉坊くんは、浄瑠璃の場面を楽しそうにやっておりまして、好きなんやなあってのがよくわかります。人によって、見せどころ聞かせどころが微妙に変わる噺の一つかと思いますが、彼の場合はこの浄瑠璃を聴かせる場面と、割木屋の幸助はんが喧嘩の仲裁の際に、さっと両手を広げる所作がエエなあと思いました。もっとも、ご本人は別のところを見てほしい聴いて欲しいと思ってたかもしれませんが…。
染丸師匠がびしっとばしっと「三十石」。「淀川三十石船船唄」を挿入しながらの展開は、のどかな風景を思い起こさせてくれます。ほんと、こういうのは染丸さんならではです。恐らく、染丸さんさいてこそ伝承されてゆくネタというのも、少なくないと思います。
染丸師匠は、ハメモノ(お囃子による効果音)の入るネタや、浄瑠璃をうなったりする場面があるネタはお手の物であります。そういう上方気質あふれるネタはアタシも好きでして、この日も心地よく聴かせてもらえました。
トリは吉坊くん、ネタ卸しとなる音曲噺「浮かれの屑より」。染丸師匠の十八番でもあります。何と言っても後半、浄瑠璃やの踊りやで紙屑選りのアルバイトをする居候が暴れまくるのが見どころです。
以前、染丸さんのを観た時は、舞台狭しとあっちへこっちへ動き回る大爆笑の高座でして、大いに感激したものです。吉坊くんも扇を放り投げたりすっ転んだりと熱演を繰り広げ、めっちゃ楽しませてくれました。
このネタも、「義経千本桜・吉野山」、「娘道成寺」などの踊りや歌舞伎、浄瑠璃など古典芸能に精通した者なればこそ「舞台狭し」と動き回ることができるネタでありまして、とにかく芸の抽斗が多彩な吉坊くんなればこそのネタでしょうな。深めてほしいです。
この日、染丸師匠と吉坊くんがやったネタは、いずれも音曲やハメモノがキーとなって笑いを誘うネタでした。「落語」と言うと、どうしても座布団の上で「昔話」をするようなイメージを持たれがち。あるいは「笑点」のような大喜利。
ああ、そういえば香港で歌丸師匠が「火焔太鼓」を熱演したあと帰り道に、「今日は落語じゃなかったねぇ、歌丸さん一人だけで好楽さんとか並んで無かったもんねぇ、残念ね」なんて言ってる人がいて、腰抜かしそうになりました(笑)。
まあ、それは極端にしても…。「落語」をちょっと知りたいな…って人がいれば、少し落語を知ってる人に聞いて、今日のようなネタがかかる会を選んで行ってみるのもいいかもわかりませんね。
楽しいもんですよ、落語は。
こんな感じです、能楽堂での落語は。当然、横から見る人もいるわけで、見る側はともかく、やる方は横から見られることってないから、なんとなく気色悪いでしょうね(笑)。
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在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。