早いもんで、今年の12月で香港を離れて2年になります。
えらいもんでして、一旦帰国すれば、そこは生まれ育った大阪、すぐに大阪市民に早変わり…。
と、いくのかと思いきや。
そうはいきませんでしたね。
まあ、何かと煩わしいことが多い。役所関係、金融機関はもちろん、交通料金の高さ、夏の蒸し暑さ、町会・隣組…。
数え上げたらキリがありません。
言っても仕方ないことですが。 ♪これが日本だぁ、私の国だ~♪
そして帰国した母国は相も変わらず景気が悪い。
その日本と経済的に緊密な関係にある香港も景気が悪いんだろうと、なんとなく察しはつくが、帰国してから現地には赴いておらず、現地報道機関のサイトや「風のうわさ」で、「ああ、やっぱり景気は悪そうやな…」って思うのが精いっぱいで、皮膚感覚としての景気の悪さは当然、感じることはできません。
もちろん、特定の業種や特定の企業は、好景気を謳歌してるかもわかりませんが、総体的には芳しくはないんでしょうね。
現地に居る人からの反論はあるかもしれませんが。
その象徴的な報道が先週からちらほら聞こえてきます。
銀行最大手の香港上海銀行(HSBC)が7日、2013年までの3年間に3000人の人員削減を行うことを発表しました。
8日付の香港各紙は、HSBCは香港に約2万1000人の行員を抱えており、発表通りの削減が実行されると、全体の14%、概ね7人に1人が削減されることになっちゃいます。多分、香港史上過去最大規模の人員削減になるのやないかと。
リストラの重点標的はバックオフィス部門。また、管理職を減らして経営効率を向上させたいという意向。
HSBCグループはこの前、20013年までに全世界で行員の10%に当たる3万人を削減する計画を明らかにした際、「香港では大規模リストラはないよ~」と表明していただけに、労組基盤の民主派政党・香港職工会連盟や各団体がHSBCに対し、決定撤回を要求する抗議活動を行っているらしい。
まあ、抗議したところで決定は覆らないと思うよ~。
改めて驚いたんだが、HSBCグループは世界中に300万人の行員がいてるんや! こいつはびっくりだな。
これまでもたしかHSBCは何度か人員削減を行ったり、支店を減らしたりしてきたけど、それでもまだこんなにいてるとは。
しかし、7人に1人がリストラ対象なんて、ほんと、日々の出勤も気が気ではないでしょうなぁ~。
例によって、労組基盤の民主派政治グループや立法議員が抗議デモを行っているが、決まったものは覆されないでしょうな。
「はい、あなた今日で終わりネ。お昼までに片づけて、とっとと帰って下さい」
って、言われちゃうんですよね、香港のHSBCの人のうちの3000人が…。ご愁傷さまです。
株の世界もよくないみたい。
8月の香港株式市場は、ハンセン指数の終値が1カ月で1905.4ポイント(8.49%)の下げに。単月で今年最大の下げに終わったどころか、リーマンショックの2008年10月以降で最大の下げに。上場企業全体の時価総額は合計で3兆HKドル(約30兆円)減少したというから、穏やかじゃないですな。
時価総額の減少額3兆HKドルは、香港取引所統計による投資家数206万人で計算すると、投資家1人当たりの損失額は約145万HKドルにもなっちゃいます!HK$1=¥90で計算してやってください、これまたご愁傷さまですな…。
米スタンダード・アンド・プアーズによる米国債の長期格付け引き下げと、欧州の債務危機拡大が主因。
8月の大幅下落銘柄は、ファンドからの売り攻勢に遭った中国本土関連株が目立ち、ブルーチップ(優良株)で最も下落率が大きかったのは、本土の生命保険大手・中国人寿保険で、24.77%の下げ。次いで、22.04%安の中国アルミ。3番目は李嘉誠が率いる香港大手コングロマリットのハチソン・ワンポア(17.83%安)、4番目は本土系の中国平安保険で17.80%の下げ。ワースト10のうち、本土系は8銘柄にも。
経済も株もまったくのド素人ですが、やっぱ、これって本土の「好景気神話」にヒビが入り始めたってことですかね。だとすれば、個人的には、なんだかウキウキするのだけど…。ごめんね、損した人…。
そしてこんなニュースもありますよ。
「香港がついに広州・深圳に抜かれるゾ!」と。なんか「今頃何言うてはりますの?」って突っ込みたいニュースですが、賢い人と我々の感覚にはズレがあるみたいで、だからニュースなんでしょうけどw。
香港政府寄りの民間シンクタンク・香港智経研究中心(BFRC)が8月30日に発表した研究報告書で、人民元ベースで試算した結果、広州市と深圳市の1人当たり域内総生産(GDP)は今後10年以内で香港を追い越すとの予測。
報告書は広東省の経済高度化が進む一方、香港の構造転換が遅れている結果、珠江デルタでは「香港離れ」が進むとみて強い危機感を表明。香港の生き残りに向け、広東省との協力体制を立て直したほうがええんでないかいと提案。
BFRCの賢い人の説明では、人民元ベースでみた場合、10年の香港の1人当たりGDPは約20万5,000人民元(約246万円)で、広州と深圳はともに約10万5,000元だったのだが、今後、広州と深圳は成長率で香港をはるかに上回るとみられ、広州と深圳は17年ごろには約23万元で香港と並ぶ見通し。翌18年には広州と深圳は24万元を超えて香港を抜きますよ、と。20年には両市と香港の差は7万5,000元以上開くという予測。「伸び悩む香港」と「急成長する広州・深圳」の対比が鮮明になりますよ~と、警告してるようだけど…。なんかねえ、こういうのこそ、小難しいことのわからぬ小市民の皮膚感覚の方が敏感で、それこそ10年以上前から「20年後くらいには、深圳が香港を抜いてるよね」みたいなことは、誰でも口にしてたし予感はしてたもんだ。数字は並べることはできなかったけど、並べるまでもなく、って感じで。
さらに報告書は、広東省経済の高度化に伴い、香港は「5つの試練」に直面すると指摘。
①香港と広東で産業の「遠心力」の強まり
珠江デルタの都市で資本蓄積が進み、香港企業の投資に対する依存度が低下。広東省経済が内需志向に変化し、「香港で受注し広東で生産する」という輸出主導型モデルの維持が困難に。
②先進産業の「香港離れ」
珠江デルタの香港系企業が技術高度化を進めておらず、香港は自動車産業など先進的製造業の育成を目指す広東省のニーズに応える産業に乏しく、珠江デルタ先進産業の「脱・香港化」が進む。
③先進産業面での広東省との協力に際しての役割欠乏
香港は09年からサービス分野6大産業(教育、医療、測定・認証、環境、イノベーション、文化・クリエーティブ)の育成に取り組んでいるが、まだ初期段階。広東省は情報産業、バイオテクノロジー、環境(エコ)産業、新エネルギーなどの高度な産業の育成を進めているため、香港は参入が難しい。
④サービス業で広東省が提携先からライバル化
広東省のサービス業は香港の同業と競争できるほどになってきた。また広州白雲国際空港、広州南沙港、深圳塩田港など広東省の物流インフラ整備で、香港の物流業は打撃を受けかねない。
⑤広東省製品・サービス市場の「国内化」
内需志向により、輸出を前提とした広東・香港連携が難しくなる上、同省住民の所得増加によって珠江デルタの消費市場も言語や文化が「地場化」するため、香港サービス業も対応を迫られる。
なんかもうねえ、賢い人たちの提言としては、がっかりな内容だな。
こんなこと最初からわかってるじゃないですか~。
こういう状況にもってゆくための「改革・開放」だったり「香港返還」だったわけでしょうに。
鄧小平が目指したものが形になっていってるわけで、日系企業はもちろん、香港の地場企業だってちゃんと対応してますよ、とっくの昔に。
で、今さら何故、香港が優位を保つ必要があると言うのですかね?
一時の「グレーダー香港=拡大香港」の夢想をいまだに抱いてるのかな…。「改革・開放」が、香港だけに美味しい思いをさせないってのは、賢い人、まさか知らなかったわけでもないでしょうに。
ようするに、こうした頭でっかちな夢想集団である、賢い人たちが、香港をダメにしてるわけですよ。
冒頭に紹介したHSBCの有無を言わせぬリストラの方が、よっぽど現実的で「カネ」の流れを良くすると思いますがねえ。
香港を歩けばわかりますが、HSBC、7‐11、サークルK、マクドナルド、茶餐庁、ジョルダーノが順繰りに並んでいます。その並びからHSBCが一つや二つなくなっても、大したことはないと思いますがね。HSBCがなくなった場所で、本気で商売したい人に商売させたげなはれ。
あ、でも香港政府はがっぽり儲かってるみたいですよ、ってか、カネ持ってますよ、きっと。
香港永久居民で18歳以上の者には、一律HK$6,000(約5万4000円)がプレゼントされますよ!
アタシも資格があるようなので、申請。数ヵ月後には、アタシの香港の口座には6000ドルが!
イイですね、香港政府、大好きよ、香港政府!
などなど、久々に、経済なんてまったくわかってないアタクシが、香港の景気について、ざっくりと語ってみました。
どんなもんでしょう?
(参照記事*香港ポスト、NNA、明報、文滙報、星島日報、信報、頭條日報)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。