(photo AC)
本年最後の「毒書の時間」。令和6年の掉尾を飾るは「待ってました!」の声もかかりそうな江都に名を馳せる神保小路は尚武館道場、佐々木磐音先生で。長いお付き合いになってしまったもんで、これが第25巻であります。もうここまで来たら最後(たしか52巻?)までお付き合いするしかないね(笑)。ほとんどライフワークだわな、これ(笑)。全巻踏破するまで死なないようにしなければ(笑)。
『白桐ノ夢 ─ 居眠り磐音江戸双紙 25』 佐伯泰英
双葉文庫 ¥648円(税抜)
2008年4月20日 第1刷発行
令和6年12月30日読了
※古書にて購入につき、価格は税抜
黒雲覆う西の丸
一念を以て護らんと
孟夏の道に包平が疾る
と帯にある。もうこれを見ただけで、ここまで25巻を続けて読んできた読者なら、この巻のざっくりとした展開がわかるのだから、まあ親切というかなんちゅうか(笑)。
現在は皇居となっている江戸城西の丸には、徳川将軍家お世継ぎとなるべき家基様がいらっしゃる。つまり家基様の身に危険が迫っているということで、銘刀備前包平(かねひら)で磐音先生がクソ熱い夏に疾走する、という筋書きとなるわけで…。もうカバーのイラストからしてそうやん(笑)。
さて暗雲の話とは別に、その西の丸様より「約定のものを手配せよ」のお達しが磐音のもとに。かねてより「宮戸川の蒲焼が食べたい」とご所望の西の丸様。さりとて、いくら日光社参で近しき間柄になったとは言え、ほいほいと参上できるわけもなく。そこで御典医桂川甫周国瑞の薬箱持ちに扮した磐音先生、薬箱に蒲焼忍ばせて登城と相成る次第。
その日光社参の折、家基様のお命を狙った雑賀衆の残党、奸三郎丸多面(かまりさぶろうまるためん)なる妖術使いが磐音の前に立ちはだかる。磐音の温情?で見逃された女狐おてんの胎内から世に出て僅かニ年。もうこの物語はどこへ行くのやらと、危険な展開なのに笑ってしまう(笑)。一応、やっつけたことになっているが、なんせ妖しの者だけに、何度も蘇ってきそうな気もする。「奸」は「まかり」と読むのか? ホンマに? とりあえず、覚えておかねば(笑)。
此巻のクライマックス、小生的には竹村武左衛門一家の顛末に尽きる。用心棒仲間だった磐音は、今や天下の尚武館道場の跡取りとなり、貧乏御家人だった品川柳次郎も無事に家督を継ぐこととなり、一人取り残された感のある竹村の旦那。そのくせプライドが高く、内儀も子供たちも手を焼く…。生き方が不細工なんだな、この御仁は。そんな父を持つ娘の早苗は、実にしっかりした子で、感心する。磐音のもとに奉公に上がることを決心する。旦那は磐音に謝意を示すのだが、これもまた生き方が不細工な旦那らしかった。もうちょっとしゃきっとしなされ! 「立派な娘に育ててみせまする」と約束する磐音のカッコよさが引き立つだけではないか(笑)。とにかく、ここに至る一連の出来事にはちょっとウルっと来た。佐伯センセ、上手いなぁ…。
全般に穏やかに過行く尚武館道場の日々、という感じだったが、田沼一派が張り巡らした計略が、磐音に迫っていることも感じさせる巻だった。
居眠り磐音シリーズのスピンオフ第1巻。ま、こちらは全巻読み終えてから、ぼちぼち読んでいきますかねw |
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。