<アイキャッチ画像:開票作業に11時間もかかるなんてねぇ…。地区別直接選挙枠では約135万人が投票して、20議席のすべてを建制派が獲得。まあ、予想通りの結果。こうなるように、あれやこれやと策を弄したわけだから。「こういう香港に誰がした!」と、2019年に暴れまくった黒服の集団に聞きたいね、俺は。(明報)>
第7期となる立法会議員選挙の開票結果が12月20日正午までに出そろった。申すまでもないことだが、結果は建制派の圧倒的勝利である。非建制派の当選者はわずか1名。ただ、この御仁が「民主派」であるかどうかは知らない。非建制派=民主派というわけでもない。
一応、10選挙区の地区別直接選挙枠で、非建制派として12人がなんとか立候補に漕ぎつけたものの、結果は全滅。わずかに、職能別選挙枠の社会福利界で新思維(Third Side)主席・狄志遠が当選したのみ。今回の選挙で唯一当選した非建制派候補となったわけだが、この狄志遠という人物も新思維なる政治グループも民主派ではない。もっとも、狄志遠自身は元は民主党の幹部の一人だったんだが、わりとスマートな思考の持ち主だったようで、政府や建制派のやることなすことにことごとく「反対!」ではなく、「是々非々」の態度でいたことで、民主党主流派と軋轢が生じたのか、後に脱退して、「中道派」の新思維を設立している。そして今回、初めて立法会議員に選出されたという次第。
せっかく、「非建制派やから言うて、みんなが民主派というわけやないで」って言うてあげたのに、当選談話で「堅持爭取雙普選」なんて言うたら、こっちの立場ないやん…(笑)。まあそれでも、日本の人、彼の当選に「中共が擁立した見せかけの民主派」とか言うてるから、そういうわけではないよと、彼の背景をちらっと記した次第。しかし、89対1ではどないもできんわな、実際には…。
建制派89議席のうち、従来から盤石の基盤を持つ伝統的建制派政党が43議席。民主建港協進聯盟(民建連)が19議席で、今回も第一党となり、香港工會連合會(工連会)が8議席で第二党に躍進。この位置は長年、民主党がキープしていた。以下、香港経済民生聯盟(経民連)7議席、新民党5議席、自由党4議席、教協に代わって登場した教員組合系の香港教育工作者聯會(教連会)も2議席を獲得、港九勞工社團聯會(労連)2議席、新思維1議席、西九新動力1議席、香港新方向1議席、専業動力1議席、新世紀論壇1議席、実政円卓1議席、政治関係無申告=無所属が37議席となった。当選者のうち31人は前期からの続投で、新人議員は56人。
宿敵の民主党が選挙戦に最初から参画していないので、民建連はもっと票を伸ばすと思っていたが、案外伸び悩んだ印象。これがこの政党のいっぱいいっぱいの線かもしれない。と、言いながらも「衛星政党」とでも言うべき工連会と合わせ技、みたいなところもあるから、まあ、こんなもんか…。
どんな仕事師がいるのか知らんが、『明報』はさすがにこういう図表作成が上手い。上のグラフを見れば一目瞭然、いかに今回の投票率が低かったかよくわかる。立法会選挙で最高投票率だったのは2016年だが、これは「雨傘直後」の初の選挙で、所謂「傘兵」、雨傘行動の主体だった若者たちが多数立候補し、何人かが当選したという選挙。まあ、連中も議員どころか、大人としての資質の欠如が甚だしく、あれよのうちにDQ=排除されてしまったんだがね。今回はそういう話題性のある候補者がおらず、香港特有の「バラエティ番組化」した選挙にならなかったことが、まずあるのかな。
それと、これを「交通各社の選挙制度への意思表示」とする声もあったのだが、それはさぁどうだかねぇってハナシではあるが、交通機関が無料となったことでレジャーへ出かける人が増えたってのも、まあ、一つの要因かもな。なんでわざわざこの日を「タダ乗り」の日にしたんでしょうな?もし、選挙に当ててきたんだとしたら、政府への挑戦であり、民衆の扇動でもあり、こいつはひとつ、国安法で摘発されるべき案件だが、そうはなってない、今のとこ。
『明報』の街角インタビューの調査結果を見てみる。投票行かなかった18歳以上の100人に聞きました。(場所:海洋公園、ビクトリア公園、西九龍文化區)
Q1)選挙行かなかった人(70人)、行かなかった最大の理由は?
・選挙制度に不満があったから … 42.9%(30人)
・投票したい候補者がいなかったから … 40%(28人)
・忙しかった、時間がなかった … 11.4%(8人)
・政治に満足しており投票の必要がないから … 4.3%(3人)
・その他 … 1.4%(1人)
なんでしょうな、政治に満足してるから投票の必要なしってのは(笑)。まあ、半数近くが選挙制度に不満を抱き、候補者に魅力を感じていないというのは、現行の制度が続く限りは、この不満層はいつまでたっても選挙には来ないな。とは言え、変わらないだろうけど…。
Q2)交通費タダがあなたの投票意欲に及ぼす影響度合いは?
・投票しない/行くかどうか未決定/わからない
・投票する人
度合0 … 38% 3%
度合1 … 3% 1%
度合2 … 3% 0%
度合3 … 1% 1%
度合4 … 10% 0%
度合5 … 25% 3%
度合6 … 3% 1%
度合7 … 2% 2%
度合8 … 0% 0%
度合9 … 1% 1%
度合10 … 1% 1%
しかし、ややこしい調査をするなぁ(笑)。面倒くさいだろうに、聞く方も答える方も(笑)。で、大体、「選挙行くよ」って人が少ないのにこの調査から我々読者は何を読み取り、感じたらよいのやら…。見えたのは、「行かない、行かない予備軍」の多くは「交通費タダ、影響ない」か「どっちとも言えんなぁ」であるということ。と、言うことは、交通費タダはそれほど低投票率に影響を及ぼしていないってことか?こういう時、やっぱり現地にいると、わざわざ100人に聞かなくても街の雰囲気見てるだけで「ピピっ」と来るんだが、COVID-19がなけりゃ日帰りでも行ってたよな、きっと…。
ま、そんなわけで、最初からこうなるように制度が改変されたから当然の結果となった「2021年立法會換屆選擧」でやんした。あ、そうそう、この「換屆」ってなんだ?ってこの前、ある人に聞かれたんですが、これはざっくり言えば「任期満了後の」ってところ。本来、2020年に実施されるべき選挙だったが、COVID-19の感染拡大で1年延期になったから、こう呼ぶってことですな。
日本の新聞社ではこういう紙面を「カルタ」と呼ぶんだが、当選者の雁首並べておくんで、前項と見比べてくださいな、お暇があれば(笑)。ないよな、この年の瀬に。
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在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。