【睇戲】『スーパーティーチャー 熱血格闘』(港題=大師兄)

今年最初の映画は、小生と生年月日が全く同じという宇宙最強の男甄子丹(ドニー・イエン)の主演作から。そしてこの映画、小生の香港在住開始当初からの友人である、谷垣健治がアクション監督を務めている。そりゃ、観ないわけにはいかんでしょ、これを。ってわけで、シネマート心斎橋へ。

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スーパーティーチャー 熱血格闘 港題=大師兄

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

港題『大師兄』 英題『Big Brother』
邦題『スーパーティーチャー 熱血格闘』
公開年:2018年 製作地:香港 言語:広東語
評価:★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)
出品人(製作総指揮):王晶(バリー・ウォン)
導演(監督):闞家偉(カム・カーワイ)
動作導演(アクション監督):谷垣健治
撮影指導(撮影): 邱忠業(ジャム・ヤウ)
領銜主演(主演):甄子丹(ドニー・イエン)、陳喬恩(ジョー・チェン)、駱明劼(ジャック・ロク)、喩亢(ユー・カン)
聯合主演(共演):湯君慈(ブルース・トン)、湯君耀(クリス・トン)、李靖筠(グラディス・リー)、劉朝健(ゴードン・ラウ)
特別介紹(推薦出演):林秋楠(リン・チウナン)、 雲千千(ユン・チアンチアン)
演出(出演):林嘉華(ドミニク・ラム)、張堅庭(アルフレッド・チョン)、胡楓(ウー・フォン)、駱應鈞(フェリックス・ロク)、歐陽偉豪(ベンジャミン・アウヤン)、樓南光(ビリー・ロウ)、李楓(リー・フォン)、 古天農(クー・ティンナン)、 謝高晉(アンドリュー・ツェ)、文志(ウェン・チー)

甄子丹(ドニー・イエン)主演の学園ものってことで、「どうにもならない不良を、功夫アクションでバッタバッタとなぎ倒し、更生させてゆく」ようなストーリーを想像していたんだが、見事に裏切られた(笑)。実にハートウォーミングなストーリーで、ドニーの新たな一面を見たような作品だった。とは言え、アクションシーンも見ごたえのあるもので、楽しく時間を過ごすことができた。

【甘口評】 ドニー演じる教師、陳俠が受け持つ6Bのクラスの生徒たちが、すごくよかった。多くが映画デビュー作ということのようだが、それだけに「素の演技」ができていたのかもしれない。このキャスティングが光る。

生徒それぞれの生徒が抱える問題は、香港に長年にわたって蓄積されてきたもので、また、解決策が見いだせないままここまできている。昨年来続く争乱の火種の背景と言っていいものも多かった。映画が公開された2018年、まさかその翌年に、一気に噴き出すことになるとは、だれも予想はしなかっただろうけど、そういう火種を絶えず抱えていたということだ。

陳俠の少年時代を演じた林秋楠(リン・チウナン)も、良く暴れて問題児ぶりを好演していた。浙江省寧波の出身で、テコンドーで数々の栄冠を手にしている。甄子丹(ドニー・イエン)の最新作『肥龍過江』にも出演しているようで、未来のアクションスターとして期待大だ。

フレッシュな生徒たちを、脇で支えたベテラン勢もよかった。張堅庭(アルフレッド・チョン)、胡楓(ウー・フォン)、駱應鈞(フェリックス・ロク)、樓南光(ビリー・ロウ)ら、香港映画や香港のテレビドラマで欠かせない面々が、出過ぎることなく、役どころをこなしていたことで、作品全体への「安心感、信頼感」を醸しだしていた。

終盤のアクションシーンは、甄家班(イェン・アクションチーム)の見せどころで、谷垣健治を核としたチームの息の合ったところを存分に見せていた。

ストーリー展開も、いい意味で単純明快でわかりやすい。ホロっとする場面もチラチラあって、色んな場面で作り手の熱量を感じる良作。

【辛口評】 70年代~80年代の、日本の学園ものの美味しいとこ取り、って感じがしないでもない。故に、ベタな筋書き。ま、大した問題でもないんだが。その他には、「何かツッコミどころがあるだろう」と、意地悪な気持ちで観ていたが、これと言って「辛口」で評するような場はなかったように思う。やや、詰め込み過ぎの嫌いもあったが、そこは、ベタな筋書きとともに、それこそ「香港映画」の王道ってところかな。

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このところ、ドニーの作品と言えば『冰封俠』シリーズで裏切られっぱなしだったので、『葉問』シリーズ以外では久々にピタッときた作品。特に問題を抱える生徒に「親子の対話」の場を作ってやるドニー演じる教師、陳俠には、泣かされたなぁ。

上述したように張堅庭(アルフレッド・チョン)、胡楓(ウー・フォン)、駱應鈞(フェリックス・ロク)、樓南光(ビリー・ロウ)らベテラン勢が、「おお~、香港映画観てる!」って気分にさせてくれて、嬉しかった。中でも、胡楓が元気そうで何より。

物語の舞台となった德智中學の場面は、香港島大坑道中華基督教會公理高中書院(CCC Kung Lee College)で撮影された。德智中學同様に、中高一貫校である。どれくらいのレベルなのかは知らないけど…。遠景に、な~んか見覚えあると思っていたら、やっぱり銅鑼灣(Causeway Bay)だった。

それと、撮影の 邱忠業(ジャム・ヤウ)といえば、大阪アジアン映画祭ではおなじみの顔。なかなか、ええ仕事したんちゃう?この撮影は。

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この映画の一番良かったのは「香港の監督が、香港の俳優をメーンに、香港で撮影した、香港人に向けた」作品だということ。香港映画、かくあるべし、である。そこに尽きるのだ(ま、大陸でも公開されてるけどねww)。

(令和2年1月12日 シネマート心斎橋)



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