落語
月亭文都芸歴30周年記念独演会「Pearl Jubilee」
考えてみれば、いや、考えるまでもなく、今年最初の落語である。もう3月でっせ!どないなん、おたく?というお叱りの声もどこかから聞こえてきそうなくらい、ご無沙汰である。これはあかん。これほど気軽に低料金で楽しめる演芸なのに。こんなことだから枯草のような毎日を過ごさなければならんのよ、君! と自分を叱るのであります(笑)。
前週までの大阪アジアン映画祭同様、この日もなんだかんだとうまいこと言って、職場をささっと引き上げて、向かう先は天満天神繁昌亭。お目当ては、ちょうど30年前のこの日に、師匠・月亭八方に入門した月亭文都師匠の芸歴30周年を記念する独演会。
一口に30年と言うが、これはとてつもない歳月よ。なにせこの小生がまだぼけーっとした大学生だったんやから(笑)。それがアナタ、今はやれ白髪染めだ、やれ育毛剤はどれがええねんだの老眼鏡が最近合わんのよなどなど…。出るのはため息ばかりなりの日々。まあ自分のことはどうでもよろし。文都さんのことを記してまいりましょう。
『兵庫船』 月亭秀都
『寝床』 月亭文都
仲入り
『元猫』 月亭天使
『親子茶屋』 月亭文都
開演ギリギリセーフかと思いきや、入場時の時刻が18時40分。「おや? 開口一番の秀都がまだネタやってるやん」。まあ、それはそれで助かったというもんだが、不思議なもんで、最初から聴けば、出だしの時点でネタは何かほぼ100%わかるのだが、途中からとなるとこれがそう簡単にはいかなかった。「多分『兵庫船』? やよな…」と自信のないまま、ネタは進んでゆく。しかし、今日は君、えらい長い時間しゃべってるな~。
秀都は、初高座を聴いていて、そのときから小慣れた話しぶりと思っていたが、この日も、このキャリアの割には、ポンポンと進めてゆく。前にも記したが、そこが逆に物足りなさを感じるのである。今から平均点の落語やっててはいけませんよ。と、大学の後輩だから、ちょっと厳しくね(笑)。
で、頼りない先輩たる小生は、帰り際にこっそりと「ちなみに、今日のアナタのネタは…」と聞いてしまうのであった(笑)。もちろん『兵庫船』。よかった、当たってたわ(笑)。
文都さんの『寝床』って聴いたことあったかな…? なんて思い出しながら聴いていた。ブログを拝見すると4年ぶりだとのこと。小生は多分初めて聴く。非常に丁寧にタップリ聴かせてくれた。色んな人がやるポピュラーなネタだけど、それだけになかなか難しいと思うよ、これは。文都師に限らず、だれも浄瑠璃聴きに来ないことが明白となり、すねてしまう旦那はんが好き。しかし4年ぶりとか言いながら、しゃっとやってしまえるねんなぁ。もちろんお稽古はしてはるんやろうけど。
天使は『元猫』という元がすぐにわかるネタで(笑)。お分かりの通り、その元ネタの猫バージョン。猫好きだとかで、飼い猫紹介ということで産経新聞に記事が載ったと報告アリ。というわけで、元ネタの犬の部分を猫に置き換えて、サゲも無難に。もうひとつひねりがほしいところではある。また聴かせてもらいましょ。前も言ったけど…。やっぱりいつも「ただいま練りこみ中」って感じが多い。そういう路線を狙っているのか?
トリはもちろん文都はんで。こちらも9年ぶりとかで『親子茶屋』。でもこれは聴いたことあるなぁ。当然いつのことなのかなんて失念しているが、「倅よ‥‥‥。」のサゲ、文都はんの声で記憶の片隅に断片が残っている。『寝床』同様に丁寧にタップリと。ただ、タップリと言っても、三代目春團治師匠の「定型」というものがあって、もうそれは研ぎ澄まされた鋼のように完成度が高いので、それ以上のタップリはなかなか上積みは困難と思われる。『寝床』はクスグリ、入れ事、ギャグ色々詰め込みやすいと見えるけど、さすがに『親子茶屋』はなぁ。そこをタップリ聴けたと思わせてくれたのは、芸歴30年のなせる技というものか、はたまた…。
独演会となれば、多くの場合は色もんさんなどゲスト出演があるものだが、一門3人だけでの会は好感が持てる。あれ?そういえばもう一人おったよな…。ま、深く追及しない(笑)。またいずれこの場におるであろう。
文都はん、今年は30周年と言うことで、いつにもまして意欲的に取り組んでいきたいとのこと。できるだけ色々と顔出ししたいところだが、どうにも平日の18時半開演はきつい。せめて19時。理想は20時(笑)。
(平成28年3月16日 天満天神繁昌亭)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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