落語
七代目月亭文都独演会 Nuovo Punt Di Partenza
平成8年(1996)に始まった「月亭八天独演会」は、昨年1月の第17回で一区切りをつけ、その後は「七代目月亭文都襲名披露」関係の高座が続き、ようやくここへきて文都としての最初の独演会が開けるに至ったということだろう。
口上では、自身もようやく文都という名前がしっくりくるようになってきたみたいなことをおっしゃっていたが、まだファンの中にはその流れに乗れない人もあるようで…。小生ももしかしたらそうかもわからない。まあ、こういうのは時間がゆっくりと解決してくれるでありましょう。
繁昌亭は、補助席が出て立ち見客も鈴なり。待ちに待った独演会という雰囲気。ちょっと八天時代とは客層が変わったのかな?と、思わないでもないが、たまたま周囲がそういうお客だっただけなのかも知れんけど。
<ネタ帳>
●第一部
東の旅リレー落語
『旅立ち~野辺』 月亭秀都
『煮売屋』 月亭天使
『七度狐』 月亭文都
中入り
●第二部
「口上」 文都一門
『星野屋』 文都
中入り
●第三部
「寄席の踊り」 天使
『がしんじょ長屋』 文都
三部構成で行われたのは、文都師匠がちかごろは大衆演劇に凝っていて、その構成からヒントを得たとのこと。しかし「ちょっと詰め込み過ぎたかな」とも。しかし、一門3人でこれだけアラカルトな構成ができるんだからこれは客としては楽しい。「東の旅」のリレーなんかは、もっと弟子増やしてもっとリレーしてほしいわ(笑)。
その発端に出てきた関大の後輩、秀都くん、坊主になってるわ~。男子なので坊主でも驚きはないのだが、芸人さんだけに「はは~ん、お前、しくじったな」なんて思ってしまう。ま、そういうところだろう。彼は正真正銘の初高座も見たが、地金がいいのだろう、この日もソツは無かった。ただし、この時点でソツがないのは、教科書読んでるみたいで逆におもろないなあ。もっとボロボロになってくれ(笑)。
教科書読んでると言う点では、天使もそうなのだけど、秀都とは全然違うんやよな、「読み方」が…。彼女も随分と場数を踏んで成長したのは間違いなく、そこを秀都はつかんでほしいなあ。師匠曰く「前座成金で、めっちゃ忙しい」らしい、天使は。そういえばあちこちの落語会で、よく名前を見かける。客と駆け引きして盛り上げて行くタイプではないと思うので、そんな芸の「すっぴん」さも魅力のひとつになってゆくのかな。
で、安心と信頼と安定の文都師の「七度狐」。やはり客席の笑いの濃度がまったく違う。トリで「大ネタ」(笑)が控えているから、セーブ気味かといえばそうでもなく、全力投球の「七度狐」で、すっかり顔がユルユルになったところで、いいタイミングでの中入り。
口上は一門3人そろって。続く文都師の「星野屋」は久々に聴いた。そもそも「星野屋」自体が久々。口上で天使は「師匠の女性を語るときの仕草がいいので」と入門先に当時の八天を選んだ理由を話していたが、このネタでも充分それを観させてもらえる。口上でそんな話があったからか、最初は女性の仕草だけで客席から笑いが起きていたほど。ちょっとその現象には失笑してしまったけど…。そして二度目の中入り。お客さん、お便所に殺到(笑)。
第3部は天使の「寄席の踊り」でスタート。「奴さん」。寄席で踊る噺家さんがめっきり減ってしまった昨今だけに、極めてほしい、ウリにしてほしいと思う。そりゃもう、春團治師匠や先代の文枝師匠などは、きれに踊りはるで。
トリはおなじみ『がしんじょ長屋』で。何度も見ても不可思議なネタである。本格派と言われながらも、こんなはちゃめちゃな新作ネタを、汗びっしょりで最後には下着だけになって、まさに「熱演」するのがこの師匠の芸の幅の広さであって、大きな魅力なのである。さすがに三席目となると、少しばかり声がかすれてきたのかな?と思えないでもなかったけど、ネタの迫力と言うか理解の度合いを超越する、いい意味でのばかばかしさに引き込まれて、あっというまにお開きと相成る。
「ちょっと八天時代とは客層が変わったのかな?」と、上述したが、終わってから「文都さんの新作落語初めてやわ~!」って周囲のご夫人方が大感激してたので、たまたまそういう人たちに囲まれていたってことでしょうな。
(平成26年11月29日 天満天神繁昌亭)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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