【綜援的規定違憲判決】ゴネ得で香港に押し寄せる大陸人

最近は香港のニュースと言えば「トリ風邪」関連一色で、まるで「香港はトリ風邪バイ菌の巣窟か?」みたいに思われてしまうような雰囲気(笑)。

しかし、そんな「トリ風邪」よりももっとヤバいことが今、香港で起きている。

この数日、目が離せないニュースがあった。

まあそれを気にしたところで、小生も今は香港永久居民なれどもその身は香港にあらずで、結局はどうでもいいことにすぎないんだけど、そう言ってしまうのもアレなハナシなんで、ちょと考えてみることにした。

そして考えれば考えるほどに、いやもう、考える前から「おい、それはないやろ!」というわけで。

邦字メディア『日刊香港ポストE – mail版 』の12月19日、20日分及び現地紙『蘋果日報』によれば、こういうことである。

「生活保護、居住7年未満でも申請可能と判決」
最高裁に相当する「終審法院」は12月17日、「綜援(綜合社會保障援助=生活保護)の申請には、香港で7年間の居住が必要とする規定は香港基本法に違反する」との判決を下す。
原告・孔允明女士(64歲)が社会福利署に「来港7年未満」であることを理由に生活保護の申請を拒否されたことが不満だと、提訴した裁判の上訴審出の判決。
03年に香港市民と結婚した孔女士は、05年に「単程証=片道ビザ、すなわち移住ビザ」が下りて来港したが、夫はその翌日に死亡。(翌日ってのが、出来すぎたハナシと言う感もあるが…)
06年に社会福利署に生活保護を申請するも、04年に「居住7年以上でないと生活保護を申請できない」との規定が設けられたため拒否される。孔女士は08年に提訴したが、2度にわたり敗訴。だがしかし!今回の判決では、「04年の規定は違憲ダ!」と判断される。
社区組織協会は、この判決で「5000~7000戸の家庭が恩恵を受け、生活保護の年間支出は3億~4億ドル(約40億250万円~53億6700万円)を増える」とみているから、香港市民の気持ちは穏やかではない。案の定、ネット上には判決を批判するばかりでなく、「新移民」そのもの、果ては大陸中国人への罵詈雑言も多く見受けられる。
実際、判決が下された直後から、居住7年未満の「新移民」からの申請が相次いでいるという。
17日当日の申請件数は31件。翌18日の申請件数は、19日時点ではまだ明らかになっていないものの、社会福利署の事務処39カ所では計12件の問い合わせあり。事務処を訪れた来港4年という女性は、香港人の恋人から家庭暴力を受けており、今年初めに生活保護を申請したが婚姻関係ではなかったため申請資格に符合せず拒否されたが、判決後に再申請したという…。

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「綜援的規定違憲」をトップで伝える『蘋果日報』

香港市民が、この判決に不信感を抱くのは、これによって公共住宅の入居資格など永久居留民(居住7年以上)でないと得られない福利の申請条件・前提がおびやかされることになるんじゃないか、ということに尽きる。

判決文では違憲とされたのは「綜援のみ」と明記されており、社区組織協会は公共住宅、医療などその他の福利・福祉政策には適用されないと指摘している。袁國強司法長官も市民に対し、「don’t worry」と呼びかけているが、エライ人の言う「don’t worry」なんてのは、何処も同じでこれほど信用ならない言葉はない…。

案の定、ネット上には判決を批判するコメントが殺到しているし、「新移民」ばかりでなく大陸人への罵詈雑言であふれている。小生がざっと目を通した限りでは、賛同の意を表すコメントは見当たらない。

「そりゃ、お前がそういう立場で眺めているからだろう」

と言われれば、そうかもしれないが、ごく普通に香港で生まれ育ち、香港で働き、法令に従い納税している者からすれば、この判決に納得がいかないのは、ごく当たり前のことだと思う。

そもそも、この原告・孔女士、複数の報道でも明らかになっているが、今年5月に高等法院で、広州に不動産物件を所有し、子供2人も養育していると指摘されている。

そんな境遇にある人物が、なにゆえに香港で生活保護を受けようとするのか?

香港では亡き夫の遺産はわずかに900ドル程度(約1万2千円)だったとかで、いきなり暮らしに困窮し、ホームレス収容施設で生活しているというが、なんで広州に帰らないの? ネット上でも多くの「網民」がこれを指摘し、「お前の国で、お前の国の生活保護受けろよ!」と言う。ホンマ、そうしてほしい。ぜひとも。

それとも 内地では、「生活保護は香港で受けるように」とでも通達が出ているのか?と疑ってしまう。

「50年不変」や「高度自治」「司法の独立」がとりあえずは謳われている返還後の香港。

法解釈を全人代にゆだねるなどして自ら「司法の独立」を放棄するような行為があったりして、100%パーフェクトには遠いけども、一応「法の下」に守られた香港と香港人というのは、「最後の砦」というべき存在だったはず。

その「最後の砦」が、このような判決を下すなんて、何ともやりきれない気持になるのは、香港市民なら当然だ。

一方で、「香港基本法」を逆手に取った「香港での出産ブーム」の異常なまでの過熱ぶり、日本製乳児用品などの買い占め&内地での転売ブーム、新築物件の購入ブームなどによるしわ寄せなど、大陸人の傍若無人ぶりは目に余るものがある。「強国人」などと揶揄しながらも、香港人はかなり耐え忍んでいると思う。

今回の判決は、小生から言わせれば 完全なる「ゴネ得」「ゴネたらなんとかなるもんや!」、これは「ヤカラ」以外の何者でもない。そう、「ヤカラ」が大陸から大挙して押し寄せてくるかもしれないという不安、いや、恐怖を香港人は抱き始めているのである。

1497673_603298009719194_223600814_n「同志諸君!我ら生活保護の申請に来たり!」
ってな事態になるのはゴメンだな

過度に大陸人を差別したり、大陸人に嫌悪感を抱く必要は無いし、「新移民」の中にも香港市民としての義務を果たし、ちゃんと生活している人だってたくさんいる。実際、知り合いにもいるわけでね。でも、今回のような事例が今後多発し、それこそ本来の香港市民の生活を揺るがすような事態になると、あらゆる大陸人への偏見が強まるばかりである。それこそ不幸以外の何物でもない。

明けて元日には、今回の「綜援(綜合社會保障援助=生活保護)的規定違憲判決」に反対する10万人動員を目標とするデモが予定されており、参加の呼びかけも始まっている。在住中も現在も、民主化デモは斜に構えて眺めていた小生だけど、もし今も在住しておれば、このデモには参加するだろう。自分の「永久居留権」獲得までの道のりを思い出せば、有無を言わさずというところだ。

日本のメディアなんかも、立法会選挙や香港記念日にだけ、「中国化進む香港!」なんて言うけれど、中央の政治介入なんてのは返還前からわかりきっていたこと で、そんな結論や見出しなら中学生の研究発表会でも言うことができる。

西側メディアが本当に「中国化」を憂慮するならば、こうやってじわじわと、それこそ香港人が言うように「イナゴの大群」のように押し寄せて、香港人が耕した田畑を浸食していく「新移民」の動向こそ、しっかり観察しておいてほしいものだ。いずれは自国の問題になりかねないのだから…。

1486831_469975469778956_885074514_n「農村を離れよ、貧窮から脱せよ、香港へ生活保護の申請に参らん!」
とかね…。
あああ、嫌だ嫌だ

今回はちょっと感情的になってしまったかな(笑)。

でもなぁ…。

ま、この件、ちょっと観察してみますね。


3件のコメント

  1. 前回は顔本でログインしてしまいますた~。
    まっ、それはともかく、今香港で生起している問題のすべては「97回帰」にその源を求められることでありませう。とはいえ当時は英国と中共の間で香港住民の意志とは関係なく締結された条約故、住民はなすすべもなく呑み込むしかなかったわけですよね。無論条件が許された人々は米国なりカナダなりの国籍を取得してまた香港に戻ってショーバイをしているわけですが、一般の住民は地を這い歯を食いしばって生活を続けるしかない、そのレヴェルでは大陸人民と同様と言えませう。そしてシナの農民同胞の侵入をあえて受け入れるしかすべもなし、と・・・嗚呼

  2. サッチャーが階段で転んだあの日から、香港はこうなってゆく運命にあったというわけでしょうね。それを思えば、「97年の7月1日香港返還よりも、香港返還が決まった1984年12月19日の英共同声明の方がはるかに印象深く衝撃的だった」と言っていた同年代の香港朋友らの言葉が、一層重く感じられます。

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