【上方芸能な日々 文楽】平成25年4月公演その2*旧ブログ

人形浄瑠璃文楽
公益財団法人文楽協会創立50周年記念
竹本義太夫三百回忌
平成二十五年四月公演 第2部

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頃よい時候というのを通り越し、もはや、暑い今日この頃でありますが、何やら、週末は最低気温が10度を割るんじゃないか、などと予想されている大阪であります。

先週に続き、今度は文楽4月公演の第2部を見て来ました。

今公演は、客足も好調なようで、週末には満席を通り越し、補助席も出る盛況ぶりだとか。

この期に及んでも「橋下効果」だと言う人もおりますが、良い作品がかかり、良い舞台を見せてくれれば、あんな忌まわしい問題がなくても、これくらいは動員出来るわけです。

第2部は、近松の代表作の一つであります「心中天網島」であります。今年は近松の生誕360年ということで、この狂言の公演は意義深いですな。

心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)

■作者:近松門左衛門
■初演:享保5年(1720)、大坂竹本座
初演の年の10月14日に起きた心中事件を12月には近松が書き下ろし、そして文楽上演という、スピーディーな展開

さて、お芝居の方は、もう、なんと言っても、二人の切場語りの浄瑠璃を心底から堪能した、「値打ち」のあるものでした。
嶋大夫、咲大夫という好きな太夫だったこともありますが、二人に聴き惚れたひとときでありましたね!

北新地河庄の段
端場を千歳大夫と清介。久しぶりです、千歳は。長い間休演していたので、ホント大丈夫なんか? と、心配していましたが、よかったよかった。

「口三味線」なんかは、千歳が復帰したんだなあと思わせてくれる。端場がきちんとこなせば、切へスムーズに物語が受け継がれていくという、好例だったように聴けたが、さて、辛口のお客さんはどうだったかな?

嶋さん登場で、あっちゃこっちゃから掛け声かかる。人気者!

前半、重たいかな? と感じる部分も散見したけど、江戸屋太兵衛、五貫屋善六をよく聴かせてくれたし、なんと言っても粉屋孫右衛門は、和生の人形とのマッチング非常によく、孫右衛門という人の肚の座り具合がしっかり伝わり、身を乗り出すほどでした。

玉女の治兵衛、勘十郎の小春もよかったけど、和生の孫右衛門の存在感の方が大きく感じたのは、この段ならではなのか、それとも嶋さんの語りと和生の遣い方がそうさせたのか…。1回見ただけでは、わかりませんね、こういうのは。

天満紙屋内より大和屋の段
端を咲甫と喜一朗で。「河庄」の端で、千歳の浄瑠璃を久々に聴いてはしゃいでしまったからか(笑)、咲甫はちょっと…、って感じだった。いやいや、悪いわけじゃないんだけど…。さらに後ろの咲さんが、あまりにも素晴らしすぎて、損したかな…。

さあ、その咲さんよ。

ええもん聴かせてもらいましたよ。冒頭でも言いましたが、ほんま「値打ち」ありました。そりゃ、補助席まで出ますわ、これ聴いたら、ねぇ。

「紙屋内」~「大和屋」を通して語るのは、初めて聴きました。前回、「心中天網島」見た時(平成19年11月公演)は、「紙屋内」を嶋さん、「大和屋」を咲さんで分けてました。(ちなみにそのとき、河庄は住さんでした。玉男師亡きあと、最初の公演でした)

これ、通して語ってもらうと、見ている方は「息継ぎ」する間がないというか、舞台に、浄瑠璃に釘付けなんですね。

前回見たとき、咲さんは「大和屋」だけを語ったわけですが、そこから今に至る間に咲さんは「切場」に昇格してますし、名実ともに、だれもが認める、ここを一気に通して語るにふさわしい太夫になられたということでしょう。

三味線の燕三もこれまた絶品でして、人形陣もあわせて、文楽の魅力である「三業が織りなす情の世界」を充分に見せてもらって、大満足でありました。

小生は、「大和屋」のラスト部分の

互いに手を取り交はし
「北へ行かうか」
「南へか」
西か
東か行く末も心の早瀬蜆川流るゝ月に逆らひて
足を、はかりに

ってところでいつも、ゾクゾクッとするのでありまして、この日もそこを聴いて、
「咲さん!ありがとーーーーーー!」って気持ちになったんであります!

道行名残の橋づくし
で、小春&治兵衛は網島で心中しちゃうわけです。

今回、パンフには、近松がかつては「恋の手本」なんて持ち上げていた心中を、「天網恢恢疎にして漏らさず」とタイトルに掛けるほど、罪深いとしているところに、近松の心境変化が…みたいな説明文があります。こう説明があって、やっとこの道行の存在の意味がわかる、ということですか…。う~ん。親切と言えばそうなんですがねぇ。ちょっと釈然としない。

「曾根崎心中」はある意味、道行がメーンでありますが、こっちはそこに至るまでのストーリーがメーンですね、明らかに。アタシがゾクゾクっとくるあの場面で「The End」でも、お芝居自体は成立するというものの、その「天網恢恢疎にして漏らさず」を表現したかったという意味での「道行名残の橋づくし」なんよね…。

第1部、2部ともに、好演目白押し。

う~~ん、もう1回行っておくべきか…。どうするべ?

2等席2300円、安いちゅうたら安いわな、歌舞伎に較べたらもう断然に。

(平成25年4月某日 日本橋国立文楽劇場)


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