【上方芸能な日々 乙女文楽】*旧ブログ

先週土曜日、地元の名刹「法楽寺」(東住吉区山坂)で行われた「乙女文楽」を見てきました。
「お不動さん」で有名な法楽寺ですが、本来は真宗泉涌(せんにゅう)寺派の大本山であります。山号を紫金山(しこんざん)、院号は小松院(こまついん)。
開基は、平家の頭領平清盛公の嫡子、小松内大臣・平重盛で、治承二年(1178)の創建と伝説されていますから、めっちゃ古い寺です。

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平成8年に建立された三重塔。
三笠宮崇仁親王殿下ならびに同妃殿下のご臨席のもと、落慶開眼法要が執り行われました。

小生はこのお寺の向かい側の裏長屋で生まれ育ちましたので、子供のころは毎日のように、ここで遊んでました。
境内には推定樹齢およそ800年の楠の古木があり、今風に言えば、この地域の「パワースポット」になっております。

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田辺の「パワースポット」、樹齢800年の楠の古木

さて、この法楽寺で開催された

「地域で乙女文楽と落語の出合・ときめき」

は、東住吉区在住の乙女文楽の第一人者である吉田光華さんによる乙女文楽の実演と、当地「田辺寄席」でおなじみの桂文太師匠の落語の公演。
「乙女文楽」というのは以前に耳にしたことはありましたが、実演を見るのはこれが初めて。
それもそのはず、平成4年に55年ぶりに復活した芸能。

「乙女文楽」とは、昭和初期に誕生した少女たちによる一人遣い人形芝居。
一般の三人遣いの文楽と違い、女性の人形遣いの生の身体の動きをそのまま直接に人形の動きに置き換えようとするもので、人形の身体を遣い手の頭と左右一本ずつの細紐で連結。手は人形の着物の両の袂の後ろから遣い手が手を突っ込んで、人形の手を持ち、足は遣い手の膝頭の下に結わいつけている
遣い手の身体への固定の仕方には、遣い手の二の腕の上部に人形をつけた腕金と呼ぶ婉曲した棒金具をひっかける(腕金式)と遣い手の腹胸部に胴金と呼ばれる人形取り付け装置の付いた胴巻きを締め付けて人形を固定する(胴金式)の二つの方法がある。

乙女文楽の誕生は、文楽座の焼失等で文楽が衰退した大正末期から昭和初年にかけて。当時盛んだった素人浄瑠璃の腕自慢・林二木(じぼく)なる人が大阪新世界のラジウム温泉で、素人浄瑠璃の人寄せとして宝塚少女歌劇にあやかって、少女による一人遣い文楽を大正十四年に考案、翌年に初演。同温泉専属となったこの座は「娘文楽」と命名され、林の創案した「腕金式」を操って主に温泉劇場で浄瑠璃人形芝居を上演していた。

その一方で、文楽座の桐竹門造氏・大江巳之助氏・吉田栄三郎氏の手によって考案された「胴金式」を使い、「桐竹」の名を貰い受けた「桐竹政子」が座頭となり、昭和五年には「大阪乙女文楽」も結成された。「娘文楽」がショー中心の旦那芸であったのに対し、「大阪乙女文楽」は当時全盛の女義太夫、新義座(文楽の義太夫、三味線)等と組んで興業を行った。したがってより本格的なものであった。
現在、乙女文楽は大衆芸能として存在せず、プロの人形遣いは五人もいない状態である。戦時中に多くの人形が焼失してしまったことも日本の伝統文化にとってかなりの損失である。保存も大事であるが新しい作品を制作し、生きた芸能として存在するべく日々活動を続けなければならない状況にあるのが実状である。
(参照 坂本真奈美改め桐竹繭紗也による乙女文楽のホームページ)

下の写真は、この日、公演された光華さん。
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人形の頭(かしら)からと遣い手の頭(あたま)が紐でつながっているのがわかりますね。

この日の演目は、地歌『黒髪』、『なすとかぼちゃ』、乙女文楽ワークショップ、舞踊『桜舞』。
三人遣いのようにダイナミックな動きには向かない一方で、遣い手の動きが人形にそのまま反映されるので、遣い手の舞踊の技量やセンスが人形にも反映される点が、面白い。
そういう点では、この日の地唄舞などは乙女文楽向きかもしれませんね。

光華さんは各方面と積極的にコラボレーションや海外公演も展開されています。
義太夫は当然のことながら、三人遣いの故吉田文吾師匠、モダンバレエ、椎名林檎CDアルバムのTVCM出演…など。

この日も言われてましたが、
「古典芸能になじみのない方にも楽しんでいただきたい」
とのことで、こうした多面的な活動を内外で継続しているのだそう。
近いところでは5月9日に、OSK、浪曲(春野恵子=あの「ケイコ先生」)、現代邦楽とのコラボレーションショーを開くとのこと。

光華さん自身、今日の協力者の一人である文太師の師匠である故・桂文枝師匠に、落語の『天神山』で人形やってみいへんか、と誘われたことから、さらにこの道にのめり込んだと言う。
そんなわけで光華さんの定例会は「縁あって乙女文楽」。
絶滅寸前だった芸能だけに、このような様々な分野との「縁」を大事に、あるいは手がかりに、乙女文楽を広めたいとの思いが伝わる会でありました。

あそうだ、文太師匠。
「田辺寄席の顔」もこの日はどっちかというと盛りたて役という位置でしょうか。
落語は二題で爆笑を誘っておりました。中でも『七段目』はさすがですな!
師匠・文枝ゆかりの乙女文楽との出会いも、文太師にとっては、これまた何かのご縁でしょう。

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COMMENT:
AUTHOR: khiroott
DATE: 04/19/2010 14:56:50
昔、うちの家のベランダから見えたお寺です。
塔は新しいですが、いいお寺ですね!
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COMMENT:
AUTHOR: leslieyoshi
DATE: 04/20/2010 01:30:06
To khiroottさん
お、ご近所でしたか。
「赤影ごっこ」するには、もってこいのお寺でした。


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