<いつぞやの、何度目かの「釜ヶ崎暴動」で駅舎が完全に焼き討ちに遭い、現在の場所にずれ再開した阪堺線南霞町駅。阪堺電車は何も悪いことないのに、とんだとばっちりだった。現在は「新今宮駅前」駅に改名されている。「南霞町」でええと思うけどな… (photoAC)>
丙午の新春を如何お過ごしでしょうか。
本年も拙ブログをたま~にでよいので、覗いていただきたく、よろしいおたの申し上げます。
さて、正月から「これ読むんかい!」みたいな一冊をご紹介申し上げまする。何と言うても、小生と黒岩重吾の衝撃的出会いの書となったのが、この『どぼらや人生』なのでありまする。
もはや、記憶は忘却の彼方のそのまた先なので、それが中1だったのか中2だったのか、はたまた中3だったか…。とにかく冬休みと同時に高熱ではないが、微熱でもないという、なんとも過ごしにくい発熱を帯びた風邪をひいてしまい、家でゴロゴロしていたのだが、あまりにも退屈なんで、近所の駅前の書店へぶらっと出かけた。そこで、風変わりなカバー装画の文庫本が小生を呼んでいて…。
『どぼらや人生』 黒岩重吾
講談社文庫 ¥320
昭和48年10月15日第1刷発行
昭和55年1月14日第11刷発行
令和8年1月5日読了
*価格は昭和55年1月14日第11刷発売当時
例により、「昔読んだ黒岩本を押し入れや倉庫のガラクタ山から引っ張り出す作業」で、引っ張り出した1冊。ただ、この『どぼらや人生』だけは複数冊所持しているので、恐らく、その中学生当時に購入した「出会いの一冊」は、第10刷くらいではないだろうか。もっとも、講談社文庫では過去の黒岩本を電子書籍として再販しているので、賢い人なら、ガラクタ山崩壊の危機を冒して古い本を引っ張り出したりせずに、電子版をお読みになるであろう。いやもう、絶対そうするべきなのだ。が、そこが根が偏屈者な小生は「それじゃ人生面白くない!」と、危険を冒してガラクタの山に向き合うのであった(笑)。
まあしかし、考えてみればエライ本と出会ってしまったものだ。昭和50年代、西暦で言えば1970年代後半。この頃の中学生には、やっぱり刺激が強すぎたのかもしれない。あっという間に読み終えて、3回くらい繰り返して読んだのを思い出す。そのうち暗記してしまうんちゃうかというくらいに(笑)。
「こういう人生があるのか!」という衝撃は強く、ちゃんと高校進学して、ちゃんと大学も出て、ええ会社に就職して…。当時の小生の年頃なら、親はそういう期待を寄せていただろうが、生憎、小生にはそんな力量は全くなく、小生自身は「サイコロ振って、出た目の人生を歩めばよろし!」な考えだったから、よく親とは衝突した。そんな折に、株の世界でブイブイ言わせるも、「腐った肉」が原因したか、一時は体の自由を失い「丸太ん棒」状態に陥り、奇跡的な快復を得ながらも、墜ちるとこまで落ちてしまい、釜ヶ崎暮らし、最底辺の生活からの脱却、キャバレーの宣伝担当……。そして長期入院中の病院でのエロいエピソードあれこれ…。こんな自伝本を読まされちゃ、たまったもんじゃないですよ(笑)。
表題作のほかに『でこぼこの手記』『三つの独白』の二編。表題作を補充するような内容で、こちらの二編も面白い。自伝本という切り口でとらえると、ソ満国境での生きるか死ぬかの日々を綴った『裸の背徳者』など一連の戦地ものと併せ読むと、「黒岩センセ、よう生きてこれましたなぁ」と感心することしきりであるとともに、この人の「業(ごう)」の強さを感じずにはおれない。
病院での日々や、出会った少し変わった人たち、釜ヶ崎での最底辺社会での体験やキャバレー勤めで見た女たちの世界などが、その後の作品に大きな影響を与えたのは言うまでもなく、「あ、これはあの作品の詐欺師のモデルかな?」みたいな人物も登場し、本作の世界に親近感すら覚える。
余談ながら。
小学生の頃、南海平野線に乗りたくて、おばあちゃんが通う南霞町(現・新今宮駅前)駅前の歯科医に同行していた時期があった。おばあちゃん曰く「関東軍で軍医してはったセンセ」とのことだったが、果たして…。何と言っても南霞町である。釜ヶ崎の玄関口である。住民でない限り、子供を連れて行く場所ではない。だから、目にするものすべてが刺激に満ち溢れていた。例えば、朝、歯医者さんに到着すると、入り口に一升瓶抱えたおっさんがゲロまみれで寝込んでおり、それはもう小学生には「およよ!」な光景だったが、おばあちゃんは「おっちゃん、邪魔やで! ちょっとどいてんか!」と言って、平然とまたいで行く(笑)。この本を読んでいて、そんな懐かしい、昭和40年代中ごろの釜ヶ崎を思い出した。今思えば、随分貴重な経験をしたものだ。南海平野線と元・関東軍軍医さん、ありがとう!
あ、それとこの本の「功績」として忘れてはならないのが、電気マッサージ器の正しい使用法(笑)。これ、当時さっそく家にあった電気マッサージ器で試したのは、言うまでもない。当然、家族にはナイショ。あれ、ホンマ気持ちええんですわ(笑)。気持ちよさと家族への「秘め事」のドキドキ感で、コーフンするわするわで、もうねえ(笑)。その日から電気マッサージ器の虜になってしまった小生であった(笑)。
あれやこれやと色んな意味で、「人生の手引書」になる一冊であります(笑)。罪な人やわ、黒岩センセは(笑)。
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古本では3万円超のこの本も電子版なら600円台! |
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
