<江戸の残り香を伝える水かけ祭りこと、富岡八幡宮の例大祭「深川八幡祭り」。「深川っ子は祭り好きよ!」とは、『居眠り磐音』のおこんさんの談(笑) (photo AC)>
齢を重ねるとともに「時代小説」を読むことが多くなった。一言に「時代小説」と言っても、背景が維新以前だけで、現代小説同様にジャンルは幅広い。気軽にスイスイ読めるエンタメ系もあれば、史実に忠実な大河小説や、史実の行間に現れる人間にスポットをあてる司馬遼太郎の世界もある。小生はジャンルにとらわれることなく、様々な作品を読むわけだが、昨今の新作は「文庫書下ろし」というスタイルが多い。今回読んだ『深川青春捕物控(一) 父と子』もその一つ。出版元のハルキ文庫は「時代小説文庫」として、軽いタッチの時代小説を量産しており、書棚にも多くの作品群が並んでいたが、最近、持ち物整理を始めていて、大半は売ってしまった。大した金額にもならず「売らなきゃよかった…」と後悔するも、我が家に並んでいたり山積みになっているよりは、読みたい人に読んでもらえればいいかってところ。少しずつ、身軽になっていこうと思う今日この頃…。
『深川青春捕物控(一) 父と子』 東 圭一
ハルキ文庫 ¥858
2025年1月18日第一刷発行
令和7年8月18日読了
※価格は令和7年8月21日時点税込
初読み作家さん。なので作風も何もかも情報白紙状態で作品に臨む。これは楽しみであるとともに、「合わない」とわかった時のプチ失望感もあるので、ちょっとした冒険だけど、それもまた愉し(笑)。そして完全なる「表紙買い」。こういうタッチの表紙に弱い。猪牙船に3人の若者。舳先の若者は手に鼻捻棒。これは岡っ引き(目明し、御用聞き)の手下、下っ引きだね…。後の二人は? などと想像をする。帯に「直球の捕物帳、ここに開幕!」とあって、このキャッチが購入のキメ手になったかな。
<作家について>
1958年大阪市生まれ。神戸大学工学部電子工学科卒業。2012年に第19回九州さが大衆文学賞大賞(笹川左保賞)受賞。2018年第10回角川春樹小説賞最終候補。2023年に『奥州狼狩奉行始末』で第15回角川春樹小説賞受賞し、デビュー。2024年に同作で日本歴史時代作家協会賞新人賞を受賞。横浜市在住。『深川青春捕物控』が初の文庫書下ろしシリーズとなる。<引用:『深川青春捕物控(一) 父と子』表紙カバー>
<作品概要>
深川漁師町にある小料理屋「しののめ」の息子・雄太。母のあきは女手一つで育ててくれており、雄太は十七歳になった頃から仕入れなどをして店を手伝っていた。そんなある日、常連であった同心の高柳新之助から己の御用聞きの手先にならないかと誘われる。雄太の父は、新之助の亡き父で、新之助は腹違いの兄であると告白され、信頼できる手下が欲しいというのだ。漠然としていた将来が雄太の中で見えてくる。雄太は誘いを受け、父の遺した鼻捻棒を手に、仲間とともに深川の平和のため駆ける! 新たな爽快時代小説、誕生!<引用:『深川青春捕物控(一) 父と子』表紙カバー>
ってことで、手抜きです(笑)。
母の営む小料理屋の常連、同心の高柳の旦那が、自分の腹違いの兄貴と知ることになる主人公の雄太だが、なんかこの辺がスイスイと話が進み過ぎというか、雄太の物わかりの良さに、もっと波乱が起きた方が楽しいじゃないか…。なんて思ってしまったが、それはこの先、兄が同心、弟、それも腹違いの弟が御用聞きの手下ということで、互いに色々と思い悩むことがあるのかもしれないし…。とちょいとそこらへんに期待してたら、そんなこたぁ、全く無くって、この巻は終わってしまった(笑)。そういうのに期待する小生がそもそも間違ってるんでしょうかねぇ…(笑)。
序章を含めた4つの章立て。それぞれ程よいボリュームで、就寝前のお供に最適という親切設計。序章では、上述の顛末。母の小料理屋を手伝う好青年である一方で、深川界隈で喧嘩に明け暮れる雄太。その腕っぷしの良さに加え、正義感も兼ね備えているってところに目を付けたのが、高柳の旦那こと高柳新之助。「こいつは使えるな」ということだろうね。父親が形見として雄太に遺した鼻捻棒は、こういうことを予見してたのか。どうでしょかね。
そして後の三つの章では事件の数々。雄太は友人の二人にも協力を仰ぎながら、事件解決に向けて活躍する。まあ、それだけなら各章完結のそれこそ「捕物控」なんだが…。
ちなみに、ChatGPTとGeminiにこのブログを手伝ってくれと頼んだんだけど、ストーリーも登場人物もめちゃくちゃでなんもわかってない。「登場人物とかストーリーがめちゃくちゃであてになりません。がっかりしました。」って言ったら、「事実と異なる内容を記載してしまい、大変申し訳ございません。ご期待に沿えず、がっかりさせてしまったことを深くお詫び申し上げます。」とGeminiは平謝りしてきた。素直でよろし(笑)。
「貝の毒で死んだ」という新之助、雄太の父親の死につながる「何か」を感じさせる下りが、各章に嵌め込まれていて、いずれそれが嵌め込みではなく、メーンの題材として兄弟を翻弄するんじゃなかろうか…。などと思わせる。この辺の手法が実にわかりやすくて、「ちょっとわかりやす過ぎるんちゃいますの?」と思わないでもない。いやあ、非常にそう思う(笑)。ま、いずれはそういう物語に展開していくんでしょうよ。
てなわけで、早くも続巻が出ているので、人気シリーズになってゆく予感…。
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在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。