【上方芸能な日々 文楽】夏休み公演<2>

人形浄瑠璃文楽
公益財団法人文楽協会創立50周年記念 竹本義太夫300回忌
平成二十五年夏休み文楽特別公演
<第1部 親子劇場>

ph_20130509_01_l文楽の夏休み公演。午前11時開演の第1部は、お子様向け演目ということなので、これまではずっとご遠慮してきたのだが、そうは言っても、どんな感じなのか覗いてみたいという気持ちもかねてよりあって、今回、行ってみることにした。

お父さん、お母さん、あるいはおじいちゃん、おばあちゃんとやって来た子供たち、さらには、中学生グループなど、当然ながら子供の率が非常に高い。こんな文楽劇場を見るのも、めったにない。さあ、果たして、子供たちはどれくらい興味を持ってくれるかな?

まずは芳穂大夫が登場して、最初の演目『金太郎の大ぐも退治』の軽い解説。ただ、この説明は子供にとってはもちろん、大人にとっても不要かもしれない…。

金太郎の大ぐも退治 鶴澤清介=補曲

■原曲は源頼光の大江山鬼退治を描く作品群を集めた『大江山酒呑童子』の一幕の「土蜘蛛退治」の場面を抜き出したもの
■復活:昭和62年(1987)


観ている&聴いている子供は、ここで太夫が語る「日本語」は一切理解できない。同伴の大人も文楽初体験の人も多いだろうから、一体全体、どういう話かさっぱりわからないでしょう…。

わかったのは、金太郎が巨大なクモの化物をやっつけたということだけ。そこで思いっきりビジュアル=人形に訴える仕組みをあれこれ工夫したんだろうけど、盛り上がったのは終盤の宙乗りくらいでしたね。

落語に出てくる丁稚さんたちのように、浄瑠璃を語って、蔵の中で芝居を打ってしまうなんて子供が今の世にいたら、逆に気色悪いですしね(笑)。

とは言え、大人は居眠りしてても、子供はしっかり舞台に釘付けになっている、という印象があったので、そこは救いかも。って、俺、芝居見ずに何を観察してるのやら(笑)。

終演後、再び芳穂大夫登場で、太夫の声色などについて説明。例えが牛若丸と弁慶ってのも、なんだかなぁ…。一方で、客席全員で「高笑い」をやってみましょう!ってのはよかった。大人の方がノリノリだったような気もするけど(笑)。

解説『ぶんらくってなあに』
MC:文哉 (手伝い 玉誉、和馬、玉延)
もうねえ、タイトルがダサダサの極みなの(笑)。かと言って、ほかに「コレ!」というのもなさそうだし…。『ぶんらくについて』でいいんでないかい? 手伝いに若いイケメンの和馬、玉延を起用したのはグッド。人形の構造の説明、三人遣いのそれぞれの役割などの説明に続き、子供たち3人を実際に舞台に上げて「体験学習」。結構、たくさんの子が挙手していたのにはビックリ。

30分の休憩を挟んで、最後の演目へ。

瓜子姫とあまんじゃく

■作者:木下順二 作曲:二代野澤喜左衛門 演出:武智鉄二
■昭和31年(1956)、大阪・三越劇場
■口語体で語られる文楽で、初演以来、好評を博している作品


嶋大夫休演につき、呂勢大夫代演。ああ、これは嶋さんで聴きたかったねえ。呂勢も悪くはないどころか、いい出来だったとは思うけど、こういう「読み聞かせ」調、嶋さんですわな、やっぱり…。

これは、『金太郎の~』とは違い、宙乗りなどの大仕掛けやなどない素朴な舞台なのに、子供の喰いつき度は断然、『金太郎の~』を上回っていた様子。やっぱり口語というのが大きいかな。瓜子姫をさらってから、瓜子姫に変身した後のあまんじゃくの暴れっぷりがおかしみがあって、簑二郎がよく遣っていたなあと。子供向けとして上演されたわけだけど、普通に大人も楽しめた演目だと思います。お昼ごはん後で、瞼が重くなるのが普通だけど、内容も上演時間も眠たくならないような配慮があったのかな?

こんな具合に、お子様の時間を大人なりに楽しんでみたわけですが、この中から、将来、文楽の門を叩く子が出現しないとは思うけど…、せめて、「文楽って、これこれこういうものですよ」と、基本的なことだけでも海外の人に説明できる程度にはなっていてほしいと思います。そしてもし気が向いたら、いつでも文楽劇場に見に来てほしいなあとも思います。こんな面白く、そして凄まじい芸能は、なかなか他にはありませんよ。そういえば、僕らが子供のころ(昭和40年代)の朝日座には、こんな子供向けの公演ってなかったよな…。もし、当時にこのような本格的な子供向け公演があったとしたら…。

あと、欲を言えば、終演後にはロビーで登場した人形が来場者を見送るくらいはしてあげてほしかったなあ。お土産(多分、クリアファイル)を差し上げるのももちろんいいんだけど、やっぱり、今日登場したナマの人形と触れ合う機会を作ってあげて欲しかったなあ。そうすれば、この日がもっと想い出深いモノになっただろうに。もしかしたら団体の日なんか限定でやっているのかもしれないけど。

(平成25年7月30日 日本橋国立文楽劇場)


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